OMATSURIKOZO's talk salon


ランダムアクセス 1996年 4月 連載108回

お祭り小僧のちょっとマイナーな香港電脳探訪
香港はやっぱりコピー天国、PSとSFのコピーソフト買っちゃったよ


 寒い冬を抜けて暖かい日が来ると、「春が来た!」と叫びたくなってしまいます。今年の冬はとても寒かったため、春の感激はひとしおですね。このところ、気合いが入らないで、愚痴っぽい日が続いていたのですが、どうも春の気配と共に気合いが入り込んできています。皆さん、春の息吹を満喫しようではないですか。
 先月号は少々愚痴っぽいお話になってしまいましたが、今月はひとつ気合いを入れて前向きな話をしていきましょう。

香港今昔、DOS/V前夜を思い出す

 さて、今月は香港に行って来ました。友人の一人にある会社の香港支店に勤務している男がいて、来年には香港は中国に帰るので、是非今年遊びに来たらどうかと誘いがあり、出かけることにしたのです。
 香港と言えば、5年ほど前女房と出かけ、パソコンショップでパーツで作られているショップブランドのAT互換機の存在を知り、カルチャーショックを覚えたことが思い出されます。当時、98やFM−Rといったメーカーマシンしか知らなかった私にとって、それはとても新鮮な驚きでした。半導体技術は日本が最先端にいると妄想していた私には、そうしたマシンはとても怪しいもののように感じました。しかし、それは私だけでなく、パソコンにかなり詳しかったものでさえ、98パソコン鎖国の中で、海外事情に疎かった多くのパソコンユーザーがそうしたものだったと思います。ちょうどその当時、日本IBMからAT互換機でも日本語が扱えるMS−DOSであるDOS/VのVer4(当時、日本IBMはAT互換機でも使えるとは言っていなかった)が好き者たちの間で隠れたベストセラーとなり始めたばかりでした。この二つを重ね合わせたその先は、現在の状態のわけですが、私としてもその当時ここまで早くパソコン世界が動ききる(ガリバー98帝国の崩壊)とは予想できませんでした。本当にパソコン世界の動きは早いものですね。
 さて、そうした思い出深い香港を再び訪れたわけですが、今回の香港パソコン事情はどうなっていたのでしょうか。5年前、386が主流であった日本に対し、すでに486に移行し始めていた香港、しかもその値段と言えば日本の386以下という落差に驚いたものでしたが、この数年の日本のパソコン価格の急降下は、香港のパソコン市場をそんなに魅力あるものにはしてくれなくなっています。現在では、日本の価格とほぼ似たようなものですし、特別目新しいものも見つかりにくくなっています。でも、やっぱり香港の怪しさに惹かれて香港旅行に出かけたわけですが。

尖沙咀星光行ビルとMAC

 香港のパソコン市場は、街の所々に固まって点在しているのですが、私が覗いたのは九龍の尖沙咀(チムシャツィ)と深水捗(シャンスイポ)です。どちらも地下鉄の駅の近くにあります。香港には3泊したわけですから、がむしゃらに探せばもっとたくさんの処が探索できたかもしれませんが、小さなグループを見ても面白くないので、2つ以外の場所を探すのを途中であきらめてしまいました。
 尖沙咀のフェリー乗り場のすぐ前にある星光行ビルの中にあるパソコンショップ群は、ビジネス街の中心にある処なので、ほとんどの店がメーカー品を扱っていて、取り立てて香港らしい雰囲気はありませんでした。香港の友人は同じビルに会社があるので、彼の会社のパソコン関係はすべてこれらのショップで調達しているとのことです。ほとんどのものがすぐ近くで調達できるので、非常に重宝しているということでしたが、MAC党の彼にして見ればMACショップの数が少ないのは気に入らないようです。香港におけるMAC市場はパソコン市場の1割以下で、5年ほど昔の日本のようです。もっとも今後香港において日本ほどMACが広がるとも思えませんが。彼も(4年前まで彼は熱心な98党であった)MAC/OSの良さは誇りながらも、今にリンゴマークのMACは亡くなると、リンゴマークのMACのコレクターになっています。先日手に入れたばかりのカラークラシックの9インチモニターの基盤を改造して、解像度を640*480にアップ出来たと喜んでいました。結局パソコンマニアはMAC派であれ、AT派であれ、同じ病にとりつかれているようですね。
 面白かったのは深水捗の高登電脳街です。地下鉄の駅を上がったところのビル(駅でうろつけば案内板に気が付きます)がそれです。地下がソフト関係、1階がゲーム関係、2階がハード関係で店が並んでいるわけですが、小さな店がごちゃごちゃに並んでいるため、どこがどうなっているのか分からなくなってしまいます。全部が全部部門で分かれているわけではなく、階が変わって入り組んでもいます。特にこのビルの構造は複雑で、同じ店を再び見つけだそうとしたら、相当このビルに慣れる必要があるでしょう。私も2日通って全体像がやっと飲み込めるようになりました。

やっぱりコピー天国

 香港と言えば「コピー天国」というイメージがありますが、尖沙咀の星光行ビルのパソコンショップではそんな雰囲気は全くありませんでしたし、香港の友人の会社でもコピーソフトの使用は厳禁だと言っていました。ところがここでは全くコピーソフトのオンパレードです。というよりも、オリジナルを売っている店は一軒もないと言う感じなのです。ショップに山積みされているのはCD−ROMばかり、日本のセガやプレイステーションのCD−ROM売場のようで、きれいに包装されたCD−ROMで、とてもコピー物だとは思えませんでしたが、値段を見てみると極端に安いではないですか。香港ドルで50ドル前後が主流で、計算してみると日本円で700円相当(現在1香港ドル=14円位)なのです。包装されているCD−ROMの表紙をよく見てみるとどうも色がくすんでいるではないですか。すべてカラーコピーなのです。ひょっとするとカラープリンターで印刷しているのかもしれません。タイトルは、日本でもメジャーな物から、香港独自のものまで、雑多に揃えてあります。
 初日は、とりあえず全体を見回るだけでくたびれてしまいました。香港に一緒に行った娘を連れて回ったものですから、ゆっくり見ることもできません。2日目は、彼女と別れてゆっくりパソコンショップ探訪を楽しむことにしました。
 2日目の午前中は銅鑼灣や旺角のパソコンショップを探しては見たのですが、うまく目的の場所を見つけることができませんでした。パソコン雑誌の記事でも取り立てて面白いところのようには書いてなかったので、あきらめることにしました。昼食を娘と一緒に飲茶で楽しみ、午後からは再度深水捗の高登電脳街です。

パソコンハードは安いか?

 今度は、ハード関係から見て回りました。ハード関係の店は、DOS/Vパラダイスや若松のような店、あるいはもっと小さなDOS/Vショップと言った感じの店が並んでいます。金曜日だというのに、もう狭い通路いっぱいに人がひしめき合っていました。ウィンドウの中のパーツの価格をゆっくり見ようとしても、押し合いへし合いと言った有様で、よそ者にはくたびれます。
 価格的には、日本の秋葉原や日本橋程度でとてつもなく安いと言ったところはありません。ショップの店頭にシステムの価格がチラシで書かれていました。1100香港ドルでペンティアム133システムなんてものもありますが、日本でも日本人好みにアレンジされた133システムで16万円程度にはこなれてきています(「PC通信」に広告を出しているエレクパなど)。全体的には香港のほうがまだ安いでしょうが、担いで帰るほどのものではなくなっています。
 ZIP、JAZZ、MOと言ったものは、本体、メディア共に日本のほうが安くなってきているようです。CPU、メモリ関係は香港のほうが安かったです。AMD5x86−133は570ドル(8000円)、8M60nSIMMが830ドル(12000円)、8MEDOが1100ドル(15500円)など、現在ではお買い得と言った感じでした。もう少しで買い込むところだったのですが、こうしたハードは少々の値段差で日本でも買えると思うと躊躇ってしまいました。やはり香港に来た以上、香港でしか手に入らないものを買わなくてはと、ソフトとゲーム関係のところを漁ることにしました。

CD−ROMは花盛り

 ソフトに関して言えば、もはやフロッピーベースの販売は消えていきかけています。簡単な印刷を施した封筒にフロッピーを入れて販売している店もありましたが、全体の店の1割にも満たない状況で、CD−ROMの時代になったのだと実感させられてしまいました。パソコンソフトもCD−ROMなら、香港ではビデオCD−ROMが走り始めているようです。フナイのビデオCD−ROM再生機も発売されているだけでなく、映画がビデオCD−ROM(私が見たのはすべてコピー版)でいっぱい売られていました。香港映画なのか、中国映画なのかは分かりませんが映画だけでなく、カラオケCD−ROMが店頭でデモされていました。私は「スピード」「ダイハード3」「ロビンフッド」の中国語バージョンを全部で150ドルで買い込んできました。ビデオCD−ROMはMPEGファイルですから、ちょっと昔まではMPEGボードが無くては再生不可能でしたが、現在ではDCI対応のビデオカードさえあればソフトMPEGで再生してくれます。中国語の字幕でもストーリーさえ知っていればなかなか楽しいものです。日本でもビデオCDの映画がもっとたくさん発売にならないかな。今年の秋には各家電メーカーからDVDの再生機が発売になると言うから、それに合わせてどっと出始めるのかな、とも思っています。
 マイクロソフトのホームシリーズのコピーものも何本か買ってきましたが、今もってインストールさえしていません。こんなにたくさんのソフト、しかもCD−ROMで入っているものなんてのは、あまりのデータ量に圧倒され、雑誌の付録と同じになってしまいます。皆さんもそうでしょうが、最近開けもしなくなった雑誌の付録のCD−ROMが多くなったのではないでしょうか。私のところでも、月に5枚程度のCD−ROMが貯まり溜まってきていますが、見る時間がありません。香港から買い込んできたCD−ROMもこうなる運命だと承知していたから、あまり買い込む気がしなかったのかも知れません。

プレステとスーファミのコピーは

 私のお目当てはゲーム関係でした。香港ではプレイステーションのコピーCD−ROMが出回っているという話は聞いていたのですが、実物を見ないことには何ともいいようがありません。ゲーム機のショップをうろついてみると、スーパーファミコンのコピー機のチラシは出ているのですが、ショーウインドウの中はノーマルなカセットや、プレイステーションのCDばかりです。話しかけたい気持ちはあるのですが、何しろ中国語なんて一言も喋れません。じっと見守っていると、英語を喋る客が来て、英語でやり取りをしています。しばらくすると、カウンターの下の方から、ソフトの一覧表を取り出して客に見せているようです。どうもそれはコピー版の一覧表のようです。
 うんうん、少し分かってきたぞ。思い切って話しかけてみることにしました。「エクスキューズミー」「プレイステーション」「コピー」とかいった単語を連発すると、ゲームのカラーコピーを綴じた小冊子を取り出してきて、1枚80ドルと言っているようです。金額とか、内容を確認するためにメモ帳とペンを持参していた私は、自分から漢字で書き込んだり、相手に金額を書き込んでもらったりしたわけです。プレイステーションのコピー版がやっぱり出回っていたのですが、立ち上がりの時のチェックルーチンはどうなっているのだろう(CD−Rを購入したとき、コピーをとったことがあるのですが立ち上がりませんでした)。ある店を覗いたとき、プレイステーションをむき出しにしてさわっている店員を見かけたことがあったので、もしかしたら改造プレイステーションになっているのだろうか。コピーCDはノーマルなプレイステーションで動くのか、それとも改造版なのか、メモ帳にいろいろ書き込んで訊ねたのですが、話が通じません。そこで、ここにあるプレイステーションを購入することにしたのですが、香港は220V、日本は100V、持って帰っても動きません。日本に持って帰ると言ったら、電源を改造した機械を取り出してきて、2700ドル(普通2500ドル)だと言い出しました。OKというと、コピーCDの立ち上げ方を伝授してくれました。本体の蓋を開けたままCD(これは本物)を入れ、音楽CDのモードに入ったところで金色のバネを取り出してきました。これを蓋の奥のいぼと下のスイッチのところに差し込み、CD(コピーもの)を入れ替えEXITすれば動き出すのです。どうも、チェックルーチンをはずすのではなく、入れ替えでごまかす方法を採っているようです。これならノーマルのプレイステーションでも、金色のバネさえ買えば動くかもと思い(実際試してみるとその通りでした。高い機械を購入したものだ)、30ドルのバネを3つほど買いました。コピーCDは日本では売っていないから、もっとたくさん買えと勧められましたが、1枚50ドルで売っているソフト専門の店を見つけていましたから、ノーサンキューと断りました。理屈が分かれば、CD−Rで焼けるかも知れないと思っていますが、まだ試していません。話によると、外国版のソフトは日本の機械では動かないと言うことを聞きましたが、アメリカ版のゲームがコピー版で動いているところを見れば、このチェック逃れで可能になっているのかな。
 ここまでくればコレクター根性が丸だしになってしまい、スーパーファミコンの最新コピー機(我が家のバージョンはDSP未対応だった)とゲームをすべて吸い出した4枚組のCD−ROMも購入してきました。両方で3000ドルにしました。雑誌などでは観光客には売らないと書いてありましたが、何とかなるものです。こんな時にはがむしゃらにチャレンジしてみることですね。
 こんな怪しい香港も中国への返還後はどうなるのでしょうね。返還前の香港を楽しむのは後1年ですよ。


一句     コピーもの 集めてみると 家のゴミ
        コレクター 知的興味と 自己弁護

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