OMATSURIKOZO's talk salon


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1997年 7月
連載123回

Pentium II マシン、届きました
強者どもの夢のひととき

第6世代CPU戦争の泥沼の
たどり着く先は荒野なのか

 鬱陶しい梅雨の季節もあと少しです。しかし、今年の夏はなかなか暑くなりません。カッと照りつける太陽に目映い日差しがないと「夏」が感じられないのは私だけではないでしょう。涼しい夏は過ごしやすいとはいえ、どこか寂しく感じられます。ぐんぐん気温が上がって「もう、夏なんていやだ」という方が私は好きです。20年近く使っていた私の部屋のクーラーも昨夏、とうとう調子が悪くなり、この6月には入れ替えました。前のクーラーの壁穴を利用して電話線やLANケーブルを這わしていたので、クーラーの取り替えはケーブルの張り直しもしなくてはならないということになり、横着者の私には気が重かったのですが、「えい、や」とやり直しました。暑い夏よ、やって来い。

やっと届いたぞ!!


 先月号で注文したと話していたDELLのPentiumU/266マシンがやっと届きました。発売日(5/8)にインターネットで注文したものの、土・日曜日が重なったためか、なかなか返信のE−mailが届きません。やっと返事が来たのが5/11日で、カードの口座番号を連絡するようにということと、納期が4〜6週間かかるという返事、覚悟を決めて注文をしました。ハードディスクの増設やモニターを17インチにしたりと重ねていくと40万円を超えてしまいましたが、かってスッピンのPC−9801VMを40万円くらいで購入したことや、ハイパー98を購入したことを考えれば格安だと納得することにしました。
 ところがまだ商品が届かないにも関わらず「インボイス」がやってきて、その通知書にはカードから引き落とした明細書も届いていました。アメリカのGateway2000に注文したときには、「送ったよ」というインボイスとともに引き落とされていたので、デルの素早さ(?)に感嘆してしまいました。これを笑い話にしようと思っていた矢先、追い打ちをかけるように5/25頃、「DELL、最大9.5%値引き」という情報がインターネット上で流れました。PentiumU/266マシンの価格攻防はよほど激しかったらしく、DELLの価格設定に慌てたエプソンダイレクト、Gateway2000がすぐに値下げを敢行し、それを見たDELLが再度値下げをしたということなのですが、もう口座引き落としがすんでいる私には関係ありません。女房に話をすると、「私が怒っていると先方に文句を言いなさい」とハッパをかけられ、「金額については私も納得して購入したのだから文句は言わないけれど、品物がなかなか届かないと言うことについては腹が立つぞ」とE−mailを送りつけてやりました。先方は少しも動ずることなく、「当初から納期は5〜6週間かかると言っていました」と非常にあっさりとかわしてきました。おいおい、4〜6週間ではなかったのかという突っ込みは止めました。この話を友人たちにしたところ、ドイツに赴任した友人は「ペンティアムU 着いた時には 半額即納」「世の中進んで 昔通販 今インターネット 一番良いのは 秋葉原店頭」とE−mailを返してきました。馬鹿話まで簡単にできるE−mailって素晴らしいなと思いつつ、なかなか届かないPentiumU/266マシンに苛立っていたところ、約束(?)通り5週間程度でやってきました。

なかなか気に入りました


 慌てて荷物を解こうにも、置き場所も決まっていません。その上、例のクーラー入れ替えの設置日も迫っていたものですから、その週の休日までお預け、土曜日に部屋の片づけを済ませてやっとPentiumUマシンのお出ましとなった次第です。今回のマシンはミニタワーといっていたので、場所はあまり取らないだろうと思ってはいたものの、現物を見てすっかり満足してしまいました。5インチベイが少ないとか、いろいろ問題もあるのですが、その「顔」にニヤリとしてしまいました。精悍で質実剛健といったニュアンス、真ん中のスイッチも実にスマートです。問題は中身だということで、マニュアルと照らし合わせながら解体し始めたのですが、マニュアルの「薄い」こと。Gateway2000のマニュアルはバインダー形式になっていて、マザーボード、ハードディスク等々、懇切丁寧なハード説明があるのですが、DELLにはほとんどありません。ハードディスク単体の方がぺらぺらでもマニュアルが付いているぞ、言いたくなるほどです。パワーユーザー向けのDimensionシリーズですよ、ハードの説明書は是非欲しいものです。ケースは手だけで開けられると書いてあり、その通りなのですが、固いものですから開けるのに汗をかいてしまいました。ハードの中にはシールド箔を施してあり、5インチベイの隠し蓋の裏まで施されていたのには驚きました。中に入っている電気ケーブルの雌コネクターにもカバーが付いているし、本当にしっかりしたケースです。

やっぱり少しは改造しなくては


 私が注文したパソコンには、SCSIカードとLANカードが入っていません。そこで、13000円でテクラムのUltra Wide SCSIカード(汎用的には絶対Adptic製がいいのでしょうが、金額が安いテクラムをあえて選択しました)とIDEのリムーバブルケースを購入してきて、差し込むことにしました。このパソコンではフロント前面にハードディスクは縦型に納められていたのですが、それをはずし、5インチベイにリムーバブルケースを設け、その中に4GBのハードディスクを納めました。CD−ROMとハードディスクで5インチベイは満杯です。内蔵のCD−RWを追加しようかとも思っていたのですが、それは今後考えることにして、起動OSを自由に換えられるシステムを優先させることにしました。1か2GBのIDEハードディスクを購入して、WIN95だけでなく、WIN−NTを扱ってみようと考えています。LANカードはNE2000コンパチの安物カードが余っていたので、それを設定しました。なんだかんだとやっていると半日以上時間がとられてしまいました。

Pentium II マシンはやっぱり「見栄」だ


 パソコンの性能はどうかと聞かれると、「さすがに速いぞ!!」と叫びたいところですが、「MPEG動画をフルスクリーンで走らせても駒落ちがないぞ」と言える程度で、昔テープからフロッピーディスク、フロッピーからハードディスクを導入したときの感動とかには及びません。ベンチマークを走らせてみたらどうかと友人は言いましたが、ベンチマークなんて言うものの数字がいくら速くても、結局体感速度が速くないとちっとも面白くありません。WIN95の立ち上がりはやっぱり設定等があるからかそんなに速く感じませんが、終了だけは目を見張ります。ディスプレィは省電源タイプになっていて、終了キーを押すとパソコンの電源があっという間に切れ、ディスプレィも待機モードになってしまいます。
 ゴミ箱の中のようになっていたPentium90マシンの中で、必要なアプリケーションだけをDELLマシンに再インストールし、データを移行して、DELLマシンがメインマシンになったら、Pentium90マシンのハードディスクをまっさらにして、新しいシステムを構成しようーーっと。横着者の私のこと、いつ完成することやら。
 今までもパソコンの必要性と将来性についてはくどいほどに語ってきていたわけですが、やっぱり自分が使わない人には頭の中でしか理解していないものだから「リアル性」が実感できないようです。「3年前かもしれないけれど、あの当時では最先端の機械を購入したのでは」と言い出すものだから、「20万円以下で最先端のマシンなんか買えませんよ、ただその時代の最もコストパフォーマンスに優れたものを購入しただけですよ」と答えました。今度購入しようと言ったのは、P/166、2GHDD、17インチモニターのコンパックのDESKPROを全部で12万円ですよ。普通で買えるものではないと私は思っているのですが、分からない人には「無駄な買い物」としか映らないわけで、こんなことでは私が精力をつぎ込んでやっている仕事全体が馬鹿馬鹿しくなったと言っても、賢明な「PC通信」の読者なら分かってくれるでしょうね。

死活が懸かった第6世代CPU戦争の勃発


 さて、今月の話は先月の話の続きが多いのですが、CPU6世代戦争についてもう少し書いてみましょう。実はこの1ヶ月ほどの間にも劇的な新展開が始まってきたのです。CPU戦争の歴史といえば、当初はインテルとモトローラーの16ビットCPU戦争(IBMがパソコンにインテルチップ、アップルがモトローラを採用したことで勝敗が決まった)、次がCISCとRISC戦争(命令構造が簡単でシステムクロックがあげやすいUNIX系のRISCチップがもて囃されたが、インテルはCISCの中にRISC構造を取り入れて乗り切る)、今一番ホットなのはインテル互換チップ戦争である。インテルのチップは会長のムーア氏の言葉(俗にムーアの法則)通り、倍々の性能アップが図られており、一時は互換CPUを作ってきたAMDやサイリックス社は追いつけないのではと思われていたのですが、俄然面白くなってきたのです。インテルのチップは当初8086から、80286、80386、80486という名前で世代が上がってきていたのですが、数字では商標登録できないと言うことで、P5をPentium(MMX Pentiumもこの世代)、P6をPentium Proと表現し始めたわけです。互換チップ会社は、インテルがステップアウトして放棄し始めた1世代前のチップ市場に目を付け、その市場において次世代に迫るCPUを登場させることで注目を浴びていたのですが、主戦場がこの数年PentiumからPentium Proに移行が遅れたインテルに、486世代CPUのグレードアップに力を注いだ互換チップ会社という構造の中で、インテル戦略からだんだん互換チップ会社が遅れを取り始めていたのです。ところがここにきて、MMX機能とP6を睨んだ市場が成熟する過程で、互換チップ会社の動きが急に活発になってきました。特にP6をPentium ProからPentiumUに路線変更(ソケット7からスロット1へ)したインテルに対し、ソケット7にそのまま差し替えることができて、PentiumUに迫る性能の新型CPUをインテルよりも低価格で発売し始めたのです。K6、M2(6X86MX)などがそうです。こうしたチップは玄人筋には大変興味深く見られているのですが、まだまだ一般ユーザーには「intel inside」が根強いわけで、この勢いの中でインテルは再び値下げ攻勢を掛けてきました。発売を開始したばかりのPentium 233 MMXの価格を今回の値下げで367ドルまでカット、Pentium 200 MMXの価格カットは240ドル、Pentium 166 MMXは138ドルと発表しました。おいおい、Pentium 200 MMXなんて、今年のはじめには8万円からしていたんだぞ。スタンダードPentium 200は119ドル、Pentium 166は101ドル、Pentium 150は89ドルという。おお、昨年夏娘に買ったPentium 166は6万ほどしていたぞ。「インテルチップの半額で同性能を保証する」と鳴り物入りで登場させたサイリックスの6X86MX、一体どうなるのでしょうね。再値下げに体力がついていくのでしょうか。たしかに互換チップはインテルよりも安く作れる構造にはなっているそうですが、量産効果という壁の前にどうなることでしょう。
 サイリックス社は、昨年1チップにCPUとグラフィックアクセラレーター等々を載せ、ISA、E-IDEを管理するチップと二つでパソコンを構成することができるという「MediaGX」という低価格パソコン向けの面白いチップを発売し注目を浴び、満を持して今回の6X86MXの発表となったわけです。しかし、インテルはチップ市場の棲み分けを拒否したようです。あくまでインテルでCPU市場を全て制覇するもくろみなのでしょうか。CPUの価格が下がることはユーザーにとって非常に嬉しいわけですが、インテルのように価格設定が市場動向から来るメーカーが一社独占してしまうことは恐ろしく感じます。是非、互換メーカーに頑張って貰いたいものです。特にサイリックス社の、ベースクロックを75MHzにあげたシステムは非常にパソコンの性能アップに繋がるものだけに、頑張れ、サイリックス、どんと75MHzの「MediaGX」を出してこい!!

回線を束ねて高速通信時代


 さて、少し新しいモデム技術について書いてみましょう。つい最近56Kbpsモデムが登場したばかりのアナログモデム業界ですが、U.S.Robotics、Hayesなどは早くも次の段階、通常の電話回線を使って100Kbps以上の通信速度(当然、56Kbpsと同じく半2重と思います、つまり読み込むスピードだけをアップして書き込むスピードはその半分という技術)を提供するという製品の開発を進めているということです。おいおい、ISDNデジタルでさえ、64Kbpsだぞと思っていたら、「チャンネル・ボンティング」という技術は2本以上の電話回線を束ねてより広い通信帯域を得ようというもので、結局ISDN技術と同じく、電話回線を束ねる技術(ISDNでも2回線束ねて128Kbps)に到達したと言うことです。でも、アナログの限界はもっと低い28.8Kbpsにあるといわれていたにも拘わらず、とんでもないところまで到達したものですね。この技術が普及するかどうかという点については私も現在コメントできませんが、まさしく「凄い」と語っておきましょう。テストでは2回線を使って最高112Kbpsの通信速度を実現したと言っていますから、インフラの整備さえできれば実現することでしょう。と言うよりは、こうした技術は「今あるインフラをできるだけ利用して、より高速な通信を可能にする」というところにミソがあるのでしようね。パソコン通信からインターネットへのダイナミックな動きは、インフラの整備を越えたところにまで発展したために、つじつま合わせのような技術がどんどん生まれてきているわけですが、このつじつま合わせの技術が世界を支配してしまうかもしれないわけです。期待して見守っていましょうね。

インターネット時代の「猥褻」裁判


 最後の話題は「インターネット・プッシュ技術」について話しておきたいと思っていたのですが、この技術の可能性のおもしろさは感じるものの、まだ私には咀嚼できていないので、次の機会に譲り、先月号で少し書いた「インターネットを巡るアダルトサイトの裁判」について書いてみましょう。
 先月号で私は強権の力がひしひしとインターネットの自由な世界に押し寄せているのではないかと言った話を書きましたが、実際、マスク処理をするソフト(FLMASK)を開発した本人を逮捕すると言うことは、強権が「臭いものは全てフタをする」という姿勢を露わにしてきているとしか言いようがありません。ある学者に言わせれば、「画像データをWWWサーバに蓄積することが『わいせつ図画公然陳列』に当たるかどうか疑問という意見もあります。こうした「犯罪」の刑罰はそんなに重いわけでもありませんが、それでも理不尽なことをそのまま知らんぷりをすることは問題があるでしょう。と、思っていたら、やっぱり集まってきたのですね。こんな事件に弁護団が形成されたそうです。オームなどの大きな裁判ではこうした大きな弁護団ができるわけですが、この事件についても15人の弁護団ができたそうです。頑張れ、弁護団。「チャタレー裁判」「黒い雪裁判」等々の猥褻判定裁判に負けないような裁判にして貰いたいものです。証人に大島渚でも、野坂昭如でも、田原総一郎でも、いっぱい呼んで、もっともっと大きくしてしまい、隠微な形でも判決なんかさせないようにしようではないですか。

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