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1997年 9月
連載125回
ジョブスのクーデターは
アップルを救うか
Windows98 PC98
NECはこれを待っていたのだ
暑い夏も乗り越えて、過ごしやすい季節が目の前です。と、書いたものの、実はまだこの文章を書いている今は「盆休み」の始まりにいるところです。今年の夏は(明日出発)女房とトルコ旅行に出かけると言うことで、原稿を早めなければと急いでいるところです。みなさんもいろんな計画で夏を楽しんだことでしょう。充分夏を楽しんだところで、さあ、元気を出して秋を頑張りましょう。
ジョブスの反撃、凶か吉か
さて、パソコン業界は、アップルのスティーブン・ジョブスの反撃で騒然としてきました。古い取締役を追放して、自分が取締役の返り咲くと同時に、NCパソコンの急先鋒であるオラクルのラリー・エリソンを加える一方、マイクロソフトからの資金的・技術的な連携を強めるという形でアップル社のクーデターを完成させてしまいました。カンボジアの政変を見るような思いがしますが、ジョブスの場合は自社内のクーデター劇を業界最大手のマイクロソフトとオラクルを巻き込んでしまうと言うところが凄いところです。これでアップル社は大丈夫なのかと問われると、何とも言えないところですが、ジョブスはNextにおいてハードとOSの会社からOSの会社へと路線変更した経歴があり、このクーデター劇の終着駅はPowerPCのMAC−OS、インテルチップのWindowsOSの棲み分けにあるのではないかと思います。互換機メーカーにハードの製造は任せて、MAC−OSの開発に注力する会社となっていくような気がします。この路線についてはずいぶん前からパソコン識者といわれている人たちから声が挙がっていましたが、やっとその方針が固まったのではないでしょうか。ジョブスはこの方針を進める上で、自社だけで独自に進めるのではなく、現在の業界最大手であるオラクル社やマイクロソフト社を巻き込んでしまったところにミソがあり、低迷していたアップル社の戦略がやっと見えてきたという感じがします。もっともクーデター劇がお家芸のアップル社のこと、何年この政権が維持できるのかはジョブスを持ってしても分からないところでしょう。案外、この政変を外から援助したビル・ゲイツだけが数年先にほくそ笑んでいるのでは。慌てふためいた会社も多いことでしょう。
システムチップを巡って
そういえば先月、インテルの値下げ発表によってAMD社とサイリックス社が慌てふためいたのではないかと書いたと思ったら、ナショナルセミコンダクタという会社がサイリックス社の買収を発表しました。サイリックス社というのは、チップの開発を行う会社であって、そのチップの生産はIBM等に依頼しているため、需要量に会わせた生産ラインが確保できなくて売り上げが伸ばせないデメリットを持っていた会社です。一方のナショナルセミコンダクタという会社は生産ラインをデジタル半導体工場へと変換したものの、生産の核となる主要なCPUを持たないと言う弱さを持っていた。この両者の合併はなかなか時期を得たものですが、問題はサイリックス社が最先端のP6戦争に向かいたかったのに対し、ナショナルセミコンダクタ社は大衆的なCPUを作りたいという点にあるでしょう。サイリックス社には、インテルP6対抗である6x86MXと同時に、5x86コアに周辺機能を集積したMediaGXというチップを持っていて、このチップはある意味において注目のチップだったわけです。ナショナルセミコンダクタ社に合併された後の戦略はどうもこのMediaGXの改良と大量生産という方向に向かうことでしょう。このチップの特徴は、1つのチップの中にシステム(CPU、グラフィックス、I/O等で構成されるもの)全部を入れてしまうため、非常に廉価にパソコンが作れてしまう点にあります。システムオンチップといわれるこのチップは、コンパック社も導入していて1000ドルを切るパソコンの心臓部に用いられています。いままでこのチップを採用したマザーボードは秋葉原にも出回ることがなかったのですが、安いネットワークパソコンのマザーボードとして少しずつ表に出始めてきています。こうした考え方は当然インテルも持ってはいるでしょうが、彼らの勝機を確実にするためには早いうちに200MHz程度の速さを持つシステムオンチップを登場させることでしょう。
下方修正されたパソコン出荷台数
CPU価格とメモリ価格の下落はとどまるところがない有様です(インターネットを接続している人なら毎週土曜日に更新される秋葉原情報は是非覗くと良いですよ。http://www.impress.co.jp/akibamap/hotline/index.html)。パソコンユーザーとしては嬉しい限りです。ところが、この数年確実に30%程度延びていた日本のパソコン販売数も、ここにきてどうも翳りが見えてきたようです。各社は売り上げ予測の下方修正をしてきました。パソコン価格が落ちてきたというのに販売数が落ちるとはどういうことなのでしょうかね。どうも、買い換えの需要が停滞してきたことにあるのではと私は推察します。新型のパソコンを購入しても3ヶ月も経てば旧型になり、この旧型といいながらWIN95を走らせる上で取り立てて不都合を感じない、だったら買い換えまではしなくても良いだろうし、何だったら安くなってきたCPUの交換とメモリの増設で対応しようと言うのが現状のベストと多くのユーザーが考えてきているに違いありません。下方修正でだぶついた新型機種が安く放出されたのを見かけたら購入するのも手かもしれません。私の友人の中にも、型遅れの機種を格安で購入してきて、それのグレードアップ遊びに勤しんでいる人もいますが、古い機種には時々ボトルネックとなっている設定があり、単純にCPUの換装程度では速くならないこともあるらしく、そのボトルネックの除去方法を試行錯誤しているようです。へたに旧型機種で試行錯誤するくらいなら、新型のマザーボードを購入して新たに組み立て直した方が早いと遊んでいる友人もいます。やっぱり、メーカーの発売する新型パソコンが売れなくなっているのは、こんなところに原因があるのかもしれませんね。
ソフマップもどうなるのだろう
この数年、パソコンの売り上げ台数がぐんぐん延びたにもかかわらず、パソコン関係の会社では多くの倒産が起こりました。ICM、ステップ、ソフトウェアジャパン等々。今、あれだけ大きくなったソフマップも危ないと言われています。200億円とも言われている多額の借入金などから経営難の噂で持ち切りだったソフマップですが、携帯電話販売業の光通信からの資本参加を受けることが先日発表されました。光通信と言えば、電話やポケベルなどを売っている最近好調の会社だそうで、同じように脚光を浴びているパソコンと通信関係ですが、その内実というのはなかなか火の車なのでしょうね。私もソフマップではちょくちょく買い物をしたものですから、ルピーもちょっと持っています。ルピーの取り付け騒ぎがおきないよう、頑張っていただきたいものです。
パソコンエミュレーター
先日来、私の友人の一人はインターネット上にアップされている「エミュレーター」を検索して回っています。それにつられて私も検索用ソフトウェアで探し回ると、ファミコンやスーパーファミコン、x68、PCエンジン等々のWindows上で走るエミュレーターが発表されています。フリーウェアだけでなく、シェアウェアもありますが、よくもこれだけたくさんのものがあるものだと感心します。もっともOSをエミュレートしてくれるだけですから、走らせるプログラムをどこかで探してこなければなりません。私の場合はファミコン時代からROM吸い出し機で集めていた数多くのソフトがあり、早速試してみたわけです。ファミコンのソフトはかなりうまく走りますが、スーファミのエミュレーターは音楽がサポートされていなかったり、画面が化けてみたりで、まだまだのものです。もう少し性能がよくなった頃、またダウンロードして試してみることにしましょう。
PSを改造しちゃった
そんなエミュレーター遊びをしている頃、プレイステーションの改造の話が聞こえてきました。昨年の3月に香港に遊びに行ったとき、香港では海賊版のソフトがかなり出回っていて、1枚700円だったので10枚ほど購入してきました。この海賊版のCDをプレイステーションで走らせるためには、黄金軸というバネを本体のCD−ROMドライブにかませて、しかも本物のCDを入れて起動し、プレイステーションのロゴが出た時点で海賊版と取り替えるという作業が必要でした。当時においてはCD−Rの値段も高く、コピーするCD−Rのソフトウェアも優秀なものが少なく、プレイステーションのコピーは「そんなものもある」と言った程度でしたが、どうも現在では密かなブームとなっているようです。任天堂の牙城を完全に覆したソニーのプレイステーションは、マニア達の格好のターゲットとなったようです。当然こうした好き者の大好きな私は、改造チップを手に入れました。昔はこうしたものを手に入れるためには、いろいろな手づるが必要だったわけですが、今ではインターネットで検索すれば出てきます。何人かのメンバーやグループが、それぞれに技術を発揮して発表しています。私はhttp://www.comecome.com/jikken/plasta/plasta.htmlで改造チップを購入し、プレイステーションをばらして半田付けしました。6本ほどの線を接続する必要がありますが、PT110(ウルトラマン)の改造ほどの腕前は必要ないようです。改造後、海賊版のCDを入れて起動してみたところ、本物と同じように動きます。黄金軸で入れ替えをしていた当時には音が出なかったり、少し化けていたりしたのですが、同じCDでありながらすんなりと動くではありませんか。さすがは「2代目国民ゲーム機」、好き者達によって丸裸にされてしまうのですね。まあ、ガチガチに改造の余地もない機械なんてものは味気ないもので、こうした余地が残されているところが良いですね。この改造チップというのは、もともと国別コード(プレイステーションでは外国で発売されているゲームが動かないように国別コードが入っている)のチェックはずしのためのもので、これが海賊版にも有効に作用すると言ったことになるようです。この分では国別コードで外国産の映画は見えないようにしようとしているDVDも、改造チップの取り付けで対処できるのではと期待してしまいます。
CD−RWまで購入しました
ここまできたら、TOSHI先生も購入したというCD−RWを購入して、一度は海賊版を作ってみようと挑戦してみました。大容量の外部記憶装置の現在の本命としてCD−RWを推薦していた手前もあり、緑電子の外付けタイプを購入しました。TOSHI先生と同じリコーのドライブですが、緑電子が一番安く、65000円でした。付属ソフトも同じ「Easy−CD Pro」等で、安いが一番と緑電子に決めました。SCSIの外部接続ですから、接続には何らの問題もありません。こうした機器は微妙ですから(書き込みエラーはスクリーンセーバーや他のアプリケーションなどがバックで走っているだけで起こるそうです)、ターミネーターだけは必ず着けることが肝心で、できれば他のSCSI機器は繋がない方がいいのかもしれません。付属の「Easy−CD Pro」を使ってプレイステーションのコピーを作ろうとしたのですが、このソフトではプレイステーションのCDのフォーマットをサポートしていませんでした。そこで友人に電話をすると、自分がうまくいったソフトを紹介してくれました。「B’s Recoder95」というというソフトで、CDの複製というのをクリックすると簡単に複製を作ってくれたということで、早速試してみることにしました。6倍速の読み込みで、2倍速の書き込みの機械ですから、時間はいい加減かかります。操作は簡単とは言え、時間がかかり、こりゃあ、案外めんどくさいものです。どうしてもコピーしようと思ったら、夜寝る前にセットして寝ている間に作業させるのが一番と言うことになるのでしょうかね。
Windows98ってNECのブランド?
マイクロソフトが次期バージョンのWindowsを「Windows98」と発表しました。「PC98」という次世代マシンの規格の名前といい、NECの「PC−9801シリーズ」とだんだん紛らわしくなってきましたね。昔、この「ランダム・アクセス」で98年にはNECが再度脚光を浴びるのではと言う冗談を書いた記憶があるのですが、どうも「Windows98」が発表されたら、パソコン素人にはパソコンはNECでなくてはならないと勘違いが起こってしまうのではないでしょうか。NECさん、よかったですね、「98」が飛ばされなくて。「Windows97」や「Windows99」となっていたら「98」の影がますます薄くなってしまうかもしれないから。数字あわせが面白いのなら、GATEWAY2000だって可能性はあるでしょう。2000年代のWindowsは「Windows2000」という名前になる可能性は高いでしょうから。それでもそのころOSはどのように変わっているのでしょうかね。今回のWIN98にしてもほとんど大きな変更点はなく、目新しいウリがないといわれていますから、WIN2000にしてもDOSからWindowsに移行した当時ほどのトレンドとはなりにくいことでしょう。
何か新しいものはないのだろうか
目新しいトレンドが少ないこの頃です。何かガーンと来るようなことが起こらないでしょうかね。
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