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明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
と、挨拶をしつつも、年毎に年賀気分が失われてしまう近年がなんだか寂しく感じてしまうこの頃です。たしかに正月から大手スーパーやコンビニエンスストアーが開いているというのは便利なものですが、日常と変わらない日が続くというのは新年という新しい気分を満喫するのには少し気分を害されるものがあります。まあ、こんなことを書くと年寄りの冷や水といわれそうですが、初雪が降った朝、誰も踏みしめていない真っ白な雪に自分の足跡を刻み込むように、新年の朝は人通りのない道をまっさらな気分で少し散歩してみたいものです。
少しばかりパソコンを購入しました
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さて、このところパソコンパッションというかパソコン物欲が落ちてきている私ですが、ここはそれ正月のことですから少し景気のよい話もしていきましょう。
世の中はいろいろ不況の話題で持ちきりですが、幸いなことに我が社は業績も収益もそこそことなったため、少々の買い物ができることになりました。社長が何か要るものがあるようだったら今年中なら購入するよというので、デジタルカメラやパソコン等を頼むことにしました。すべて単品で20万円とか10万円以下で揃えることにして、この際ですからパソコンも数台まとめ買いというささやかなお遊びをしました。付き合い先のパソコンショップに電話すると、減税ブームの反映で来年の4月には耐久消費財の見直しがあって、パソコン等は100万円位までが経費落ちできる範囲に上がるので、少し待ったらどうですかといわれました。たしかにその範囲になるのだったらセコセコした買い物をしなくて済むのですが、来年の我が社の業績はどうなっているかは分からないので、やっぱり今購入すると伝えました。Windows98がそこそこに動くOSだったため、セレロンやK6-2が大人気のこの頃、安いパソコンは一杯ありますもんね。ノートパソコンにしても、高木産業からは解像度1024*600、10.4インチでMMX233のサブノートが19万円で発売されています。CD−ROMは別売とは言うものの、メーカーでしか発売できないと言われていたノートパソコンでさえショップブランドで、しかも魅力的なマシンが登場する今日、古くからパソコンを購入していた私たちにとって見れば嬉しいのか悲しいのか分からない現状にただ唖然としています。
1999年のパソコンの方向
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まあ、こうした話は横に置いて、新年ですから今年のパソコンの行方についても少し語ってみましょう。最近のパソコンの機関銃のような新製品ラッシュはさすがの私にはもはや付いていけなくなっています。でも、流れというものはひとつひとつの製品に現れるのではなくて、どこかにキーポイントがあるはずです。
CPUはますます高速化・高性能化してくる
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まずはハード面から。CPU、インテルの独走かと思えたCPU産業ですが、互換チップメーカーはなかなか頑張っています。つい最近まではすべてのメーカーはx86互換チップの追随者かとも思えていたのですが、どうもここにきてそれぞれの会社の路線が明確になってきたようです。野党第1党のAMDは、与党であるインテルに全面対決の姿勢を示し、PentiumUに対抗できる機能を付与したというK6-2からインテル次世代チップKatmaiに対抗するK7まで新たなロードマップを提示してきています。膨大な生産量と潤沢な開発資金を有するインテルに、互換チップメーカーは技術的に引き離されてしまうのではと思えた数年前でしたが、火事場のクソ力とでも言うのでしょうか、素晴らしいものです。アメリカではもう当たり前となってしまった1000ドル以下のパソコン市場において健闘しているのがCyrix社です。National Semiconductor社に買収されたCyricですが、統合型プロセッサ「MediaGX」はそのコンセプトの面白さ故か、パソコン以外の情報機器の中にまで浸透し始め、パソコン世界のすそ野を広げているようです。そのCyricも新しいCPUコアアーキテクチャの開発には余念がなく、PentiumUクラスのMediaGXの登場だって近いうちかもしれません。こんな開発戦争に明け暮れる世界に新規の会社が生まれてくるなんて信じられなかったのですが、昨年のwinChipのIDT社に続き、mP6という新しいチップをもってRISE社が登場してきました。インテルがSocket7を捨てて特許でがちがちに決めたSlotに移行してから、互換メーカー達はどこに行くかと思っていたら、このSocket7をSuper7に押し上げ、なかなか健闘しています。インテルと真っ正面から対抗しようとしているAMDは、時期を見てSocket7から独自なバスアーキテクチャへの移行(K7)を目論んでいるようですが、この離陸がうまくできるようなら新しい風が生まれそうですね。
「Leracy Removal」を受けてマザーボードは
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マザーボードもCPU戦争の影響を受けながらどんどん変化してきています。でも、「Legacy Removal」という「古い仕様を捨てる」というコンセプトがどんどん進んでいくと、もうパソコン本体は触れなくなる可能性が高くなります。そうなったら古い筐体に新しいマザーボードやCPUを入れ替えるというやり方は消えてしまうのでしょうか。大手メーカーのパソコンは現在でも基本的にはパソコン内部の改造は止められていて、別段「Legacy Removal」の思想がユーザーに影響を与えることもないし、自作ユーザーの間ではやっぱり「手作り」の思想が生き残ることでしょう。ということは、あんまり現在の状況と変わらないか。ただ、新しいマザーボードにATバスが消えては行く可能性は高いでしょうね。
両極端に進化するハードディスク
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ハードディスクの性能もますます高速・高密度化してきています。Quantum社は10000回転の高速ドライブを発表しました。通常のドライブが4500回転、高速といわれていたのが7000回転だったのですから、相当に速度が速いでしょう。特にこの中には新しい転送方法も組み込まれていると言うことなので、SCSI等バスの底上げをまたもや要求してくることでしょうね。それにしてもハードディスクの値段が安くなってきたことか。ノートパソコンでさえ3〜4GB、デスクトップマシンなら6GBが当たり前になってしまった時代、呆気にとられています。1GBのハードディスクを20万円で購入して見栄を張れたのがたった5年位前ではなかったのか...。IBMはコンパクトフラッシュの大きさにまとめたハードディスクを発表するし、こうした底支えするハードがどんなコンシューマ製品を生みだしてくるか楽しみです。
高速通信技術の普及こそが必要
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先月号でも書きましたが、ハードの進化とソフトの進化が螺旋状に互いを刺激しあって進んできた時代が小休止を迎え、今どこに新しいパソコンの未来があるのかが問われている時代に入ってきているわけです。スタンドアロンであったパソコンが、パソコン通信の時代を経て、現在インターネットが大きくブレークしようとする時代に入っています。NTTは長い間ISDNを遊ばしていましたが、インターネットブームによってブレークしてしまいました。いまやアナログ電話の需要は停滞・後退してしまい、ISDNと携帯電話の重要の伸びばかりです。インターネットがISDNを下支えした今日、インターネットユーザーはISDNに満足しているのかと言えばとんでもありません。今、ハードウェアとして求められるインフラは通信の高速化ということにつきるでしょうね。600bps程度から始まった通信、自分のパソコンの画面にとろとろと表示されるテキストデータが、電話線を通じて流されてきたものだと思うと感動してしまったこと、テキストではなく画像データが少しずつ少しずつ表示されたときの感動、もう忘れてしまいました。今じゃ、インターネットに接続して画像がなかなか出てこないときにはさっさと接続を停止して、次のサイトにアクセスと言った有様です。うん、通信こそがパソコンのハードとソフトのあのジレンマを未だに抱え込んだままです。ひとつは高速通信技術の確立、ひとつは通信線のインフラ拡充と言うことになるのでしょうか。
ここで問題となるのが日本の現状です。日本の場合、中途半端にISDNが普及してしまいました。しかも、日本の次の方向性は光ファイバーですべての家庭を繋ぐというものです。この思想はたしかに優れたものでしょうが、この整備の時間はまだしばらくかかりそうです。ほとんどがアナログ電話の世界各国においては、従来の通信インフラを持って高速通信をしようという技術が生まれてきました。ADSLという技術なのですが、それの中の「G.Lite」という規格がどうやら普及しそうな見通しです。つい数年前まではアナログ通信では2.88Kbpsが最速だといわれていたのですが、この「G.Lite」では最大1Mbpsとなると言うことです。30倍以上です。ISDNの最大速度である128Kbpsに比べても8倍からとなります。ADSLという高速通信技術は、電話局から家庭への下り方向では最大1.5Mbps、家庭から電話局への上り方向は512Kbpsの通信速度が確保でき、しかも電話通話をしながら通信もできるという優れものの技術です。問題は電話局にこれに対応した交換機の設置と、家庭に「スプリッター」という音声と通信の周波数を分割する機械が必要となるというものです。このADSLの普及版として確立しようとしているのが「G.Lite」です。ところが日本ではこの技術は導入されそうもありません。それが中途半端に普及したISDNと光ファイバーへの移行という大目的に合致しないからなのです。まさに「日本の常識、世界の非常識」というドグマに陥りそうです。こうした高速転送を前提としたインターネットサイトの普及に対応するためには、一挙に公共投資を通信にかけて光ファイバーを敷設してしまうか、2重投資をするかしかありません。さて、どうなることでしょう。日本の独自性・独立性という問題はあるにせよ、現在は世界共通の規格というのは重要なことです。アナログテレビとデジタルテレビの格闘にもあったように、世界的な技術の流れというのは今までの技術の蓄積を無にしてしまうほどのものがあります。ここは、一挙に光ファイバーを1年ほどでやり遂げたりすると面白いのかもしれませんよ。
BeOS発進
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さて、ハードを見てきたなら、今度はソフトです。今、面白くなってきそうなのがOSです。マイクロソフトに牛耳られてしまったOSに対抗しようと、沙門さん推薦のLinuxが頑張っていましたが、年末にx86チップに対応した日本語版BeOSが登場しました。一時は次世代MACのOSとなるのではと注目を浴びたOSでしたが、ジョブスの復活でその夢は断ち切られてしまいました。PowerPCに対応していたところのOSをインテルチップに対応させたのは1年ほど前でしたが、周辺機器や日本語環境とかいろいろ問題がありマニアの単なるおもちゃでしたが、今回は本格的にひとつのジャンル(AV関係)を狙おうと登場してきたようです。ぷらっとホームが日本総代理店になり、日立からプリインストールマシンが発売されるなどなかなか力が入っています。「PC WAVE」からは臨時号ですが「Beマガジン」が発行されたり、興味深い動きを見せています。少し刺激の欲しい人にはぴったりのOSかもしれません。
音声入力かな漢字変換の進化
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ソフトウェアで私が注目しているのが音声入力です。私自身はぶつぶつ喋りながらパソコンに入力すると言うことはあまり興味が湧かないのですが(だって、夜中にひとりパソコンに向かって喋っている自分を想像してみて下さい、ちょっと不気味ですよ)、これってやっぱり凄いことなんですよ。手が不自由な人のパソコン使用とか、オペレーションの多様化とかパソコンの利用範囲を大きく広げてくれる技術だと思っています。数年前、IBMが日本語音声認識ソフト「VoiceType」を出したとき、大森局長から一度試してみてくれと言われて試したことがあります。かなり認識率が高まっていたとはいえ、まだまだ実用に足るとは思えないと言ったことがあります。そのIBMがその技術を押し進め、今回ジャストシステムと提携して「Voice一太郎9」を出しました。IBM自体は「VoiceType」から連続発声に対応した「ViaVoice」にも一応のかな漢字変換機能を内蔵している。しかし、このかな漢字変換はWindowsの標準IMEではないために、キーボード入力とかみ合わないこともあり、今ひとつの使い勝手であったと記憶している。この点に気付いた彼らは、一番普及しているIMEを持っているジャストシステムと手を組んだと言うことなのだろう。これは非常に正しいことだと思う。音声認識の変換エンジンが独自のものであり続けたなら、その認識率がいくら高まったからと言ってもその利用範囲は限られたものとなってくる。ところがこれが汎用的に変換エンジンであれば、その利用範囲は当たり前のWindows環境と同様のものとなってくるから全く違った地平を切り開くことになるのではと想像できる。「Voice一太郎9」には「VoiceATOK」と専用ヘッドセット型マイクロフォンが付いてくるのだが、このマイクロフォンでなくて汎用マイクロフォンを用いるとやっぱり認識率は落ちるそうだ。マイクと口の距離というのは大切なようです。前回の「VoiceType」でもそうであったように、ユーザー設定と認識トレーニングというのがあって、これを行うことによってユーザーの個性によるところの認識率の低下を抑えることができるというわけです。コマンドの音声入力はかなり正確だと言うことだが、日本語の音声入力ではまだ未完成という話を聞きました。また、これの動作環境はかなりヘビーなものが要求されるようです。一応はMMX200、メモリ64KBというのがひとつの基準と言うことになっているようですが、このアプリケーションを用いるとリソースを相当に食うそうです。まあ、こういったアプリが登場することによって高機能なハードが必要になると言うのもいいことではないかと思っています。IBMとジャストシステム、ひとつひとつの技術を互いに有効に活用していく姿勢には非常に感心してしまいました。期待しています。
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