OMATSURIKOZO HOMEPAGE RANDOM ACCSESS 1999-03
OMATSURIKOZO's talk salon


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1999年 3月
連載143回

ガリバーはいつまでもガリバーか?
Linux AMD ゲリラの戦い

インターネットを監視しようなんて
どんな了見だ、警視庁は


 寒い、寒いと思っていた季節もやっと終わり、もう春が目の前です。我が家の庭には昨年オランダから購入してきたチューリップの球根が植えられているのですが、早春にかすかに芽生え始めたその芽がグングンと大きくなってきています。今年は冬は暖かいのか、寒いのか分からない冬で、暖冬だとばかり信じていたら急激な寒波に見舞われてみたりで、風邪やインフルエンザにかかった人も多かったのではと思います。幸い、私は風邪にもインフルエンザにもかからないまま冬を越してしまいましたが、頑健なのか馬鹿なのかという仲間達の噂話にびくともせず、「馬鹿が風邪をひかないだけでなく、超利口も風邪をひかないのだ」と嘯いています。
 さて、パソコンを取り巻く状況は少し動き出したように感じます。半年ほどパソコンネタに困っていた私ですが、少しずつ確実にパソコンはまた新しい世界に向けて動きし出していると感じる今日この頃です。そういえば10年近く前、9801の停滞によって少しずつパソコンに対する情熱が冷えかかってきた頃、日本IBMが密かに発表したDOS/Vの原型が仄かに次の時代を匂わせたことを思い出してきました。

マイクロソフト社に忍び寄る脅威


 その動きのひとつがOSです。昨年マイクロソフト社が独禁法違反で提訴され、その審議が騒がれているところですが、私は大方の人たちが悪く言うほどマイクロソフト社に対して悪意を感じていません。「パソコン市場を牛耳って、ベンチャーを叩きつぶす巨大なマイクロソフト帝国」というイメージをマスコミが流し続けているわけですが、私には「砂上の大帝国」と感じられて仕方がないのです。あの9801で日本のパソコン世界のガリバーといわれたNECにしても、現在は大赤字を抱えて大規模なリストラ策を発表しなくてはならなくなっています。ゲーム機世界のガリバーであった任天堂にしても、今ではワンオブゼムのゲーム機メーカーと成り下がってしまいました。巨大な資本がなければ成立し得なかった大重工業時代ならいざ知らず、現在はある意味でソフトの時代になってきています。つまり、アイデアを基にした商品の大衆時代であって、消費者の移り気さを受け止め迅速な商品戦略を打ち出す企業が生き残れ、重厚な戦略を推し進める企業は停滞してしまうという時代です。特にまだ生まれたばかりと言えるパソコン関係の市場においては、まさに「砂上の大戦闘」と言えるのではないでしょうか。数年前、NHKで放映された「電子立国」シリーズは幾多の企業の栄枯盛衰を見せてくれました。多分、マイクロソフト社にしてもまだまだ油断がならないと感じているのは実は当のビル・ゲイツ自身なのでしょう。Linuxの脅威を社内文書で流していたそうです。
 昨年、沙門さんがよくLinuxについて書いていましたが、最近では一般週刊誌においてもセンセーショナルに取り上げられたりしています。ではLinuxはそれほど浸透しているのかと言えば、これはそれほどとは言えません。というのは、パソコン人口そのものの爆発的な増加に対して、パワーユーザー層の増加はそれに見合うほどのものとはなっていないからです。例えば9801が日本の市場のガリバーとなっていた時代は日本のパソコン年間集荷台数が200万程度だったわけですが、現在では1000万台以上、世界市場においての年間出荷台数が1億台になろうとしている時代、押しつけのWindowsマシンで満足しているユーザーは、その数以上に割合比にして高くなってきていると言えるでしょう。でも、Linuxはマイクロソフトが脅威を感じるほどのパワーを内蔵しているのです。

今度の敵はゲリラOSだ


 マイクロソフト社も常に順風に乗ってここまでやってきたわけではありません。ただ、チャンスに強い会社だと私は感じています。私が思うマイクロソフト社の大きな曲がり角は2回あったと思います。DOSからWindowsへの移行時期でのOS/2との戦いとその勝利、次がインターネットの見込み違いによるマイクロソフトネットワークの失敗とIEの巻き返し勝利がそれです。次の脅威がLinuxなのです。
 では、何故Linuxはマイクロソフト社にとって脅威なのでしょうか。そのひとつの現れがインターネット上に出てきている「OS払い戻し運動」です。現在の*86系のパソコンにはほとんどの場合メーカーOEMのWindows98が初期インストールされていますが、Linuxユーザーはこんなもの要らないからその分金を返せと言い始めているわけです。まあ、もっともこの金をマイクロソフト社に請求したとしてもマイクロソフト社にとっては法的には何らの責任がないといえます。マイクロソフト社はパソコンメーカーに請求すべきであると言っていますし、私もそう思います。でも、要求している人たちも実際に金が戻ってくることを期待して言っているわけではなく、デモンストレーションのわけです。だったら、マイクロソフト社は実害を受けるわけでもないのだから、何が問題なのと聴く人がいたらヤボです。これはマイクロソフトが想定していなかったところの「敵」との遭遇なのです。マイクロソフトの戦いは常に企業を相手にしてきていましたから正規戦しか戦術を持たないのです。Linuxを擁した新しい敵はゲリラです。ベトナム戦争に見るように、現代社会においてもっとも手強い相手はゲリラであり、このゲリラは勝利すればひとつの政府まで樹立してしまう力があるわけですから、ゲリラが生まれること自体が帝国にとっては恐怖なのです。

オープンソース時代が再来するか


 では、LinuxはこのOSゲリラ運動の核となるほどの力を持っているのかと言えば、十分に持ち合わせていると私は思います。Linuxの本質はオープンソース運動です。20年ほど昔、多くのプログラマーたちはオープンソースを当たり前としてきましたが、ここにビル・ゲイツが著作権という大義名分をかざし、商売を持ち込んできました。時代を読んだ男であったわけですが、当時のプログラマーたちには嫌われ者だったわけですね。でも、パソコン市場が大きくなる時代において彼の戦略はウマウマと成功してきたわけです。当然相当な努力もありましたし、彼のOSのおかげでこんなにも早くパソコンが普及したと言うこともあるかもしれません。彼はこれだけ巨大で複雑化したOSはもはや大企業でなければ作り得ないと言う幻想を抱いていたに違いありません。独自の規格をどんどん自らのOSに組み込むことによってますます強固な世界が構築できると信じていたでしょう。ところがインターネットの登場は、新しいオープンソース運動の温床にもなってきているのです。つまり、成り上がりものが夢に描いていたところの大重工業世界はパソコン界にはなかったのです。今、Linuxには世界中の多くのプログラマーたちの援軍がインターネットに集まり始めています。
 当初、LinuxはWindowsNTの対抗馬と見られていました。インターネットサーバーを構築するための安価な方法として採用が進んできたわけで、その仕様はまだまだ難解だと言われています。でも、現在では簡単にインストールできるためにアレンジされたLinuxだとか、様々な解説本も登場してきています。もっとも力強いことは、アプリケーションを開発している会社がLinux上で走るソフトの開発を始めたというニュースです。ジャストシステムも「一太郎」を移植すると言うことです。結局現在Windowsがほとんどのシェアを占めているのは、その上で走るソフトの充実さと他者との互換性にあるわけですから、これらの問題がどんどん解決されて行きさえすれば、別にWindowsでなくても良いという事態になってしまいます。多くのユーザーはOSを使っているというのではなく、ほとんどの場合その上で走るソフトを利用しているわけですから、パソコンメーカーがLinuxをインストールしてその上に主要なWindows互換ソフトが走っていれば、マイクロソフトに支払うOSの金額だけ安くなってパソコンは売り出されるでしょうし、ユーザーも購入してしまうかもしれません。どうも新しい流れが生まれてきそうですね。

「サイバー・ウォッチ・ネットワーク」?


 ゲリラといえば、インターネットはゲリラの絶好のすみかです。私の友人たちには夜な夜なインターネットの怪しい世界をさまよい、様々なソフトやデータを収集している人たちがいます。私は彼らのような根気がありませんから、彼らの収穫物をありがたく頂戴しているというわけですが、「本当にこんなものまで」と驚くような収穫物にお目にかかります。ある友人がくれたゲーム機エミュレーターはその互換度の高さに驚き、ある友人が渡してくれたビニ本データの量の多さに驚いてしまいました。こういうサイトはあっちこっちで生まれては消していくサイトだそうで、その道の連中のたむろする情報源に遭遇することによって芋蔓式に追いかけるのだそうです。
 ところがこうしたアングラ的なサイトが「健全であるべきはずのインターネット」を汚しているとばかり、警視庁はパソコン有識者を組織して撲滅運動に乗り出したというニュースが聞こえてきました。自殺幇助事件、睡眠薬強盗事件だとか、最近のマスコミの論調はインターネットが犯罪の温床になっていると騒いでいますが、どうもこれはいささか眉唾物だと胡散臭い思いで新聞を読んでいます。新しいメディアが生まれれば、そこには必ず新しい何者が生まれます。インターネット詐欺が多いと言った話もよく聴きますが、よく考えてみれば詐欺なんてヤツは古典的な犯罪で電話を利用する奴もいれば、新聞・雑誌等々もといった感じで、取り立ててインターネットが生まれたから生まれた犯罪というわけでもないわけですよね。インターネット上で生まれるべくして生まれたという凶悪な犯罪が創造されない限り、インターネット犯罪なんて言ったってちゃちなものです。インターネット犯罪(犯罪と呼べるのかな)のもっとも大きなものといえば、私は国家転覆罪ではないかと思っています。これだけ張り巡らされた情報網は、完全に国家の枠を越えています。国家が個人を縛る方法は情報を一方的に流すことによって国策を全うしようとするわけですから、情報ゲリラこそが一番の敵なわけです。昔からお上がやってきた個人を縛る方法のもうひとつの手段は「密告」制度です。大日本帝国時代の隣組もそうですが、共産圏世界や独裁国家の密告制度は精を極めているそうです。今回の「サイバー・ウオッチ・ネットワーク」がどのようなものかは知りませんが、ゲリラが住めなくなるほどに「健全なインターネット」なんて私は欲しくはありません。

ますます熱くなるCPUホット戦争


 ハードの動きもますます急加速し始めたようです。もっとも注目株がCPU関係ですね。インテルは新しい命令セットを内蔵したPentiumIIIを発表しました。今までなら日本のパワーユーザーたちはこぞってこの新しいCPUになだれ込むところでしたが、今はCeleronとK6-2の戦い一色といった感じですね。私はこのPentiumIIIのマシンが欲しいのですが、こうしたハイパワーなCPUが昔ほど熱烈な思いでユーザーの話題に上がらなくなってきたのもひとつの時代の変換期にあるといえるのかもしれません。Slot1とSuper7(Soket7の100MHZ版)の熱い戦いは、低価格パソコン時代を反映して生まれた世界だったのですが、インテルが発売したCeleronの思わぬ性能(クロックアップ耐性の強さ)がパワーユーザーたちの心を動かしたようです。インテルは今年の始めにこのCeleronの高速版にSlot1だけではなく、Soket7の形状に酷似したSocket370タイプを投入してきました。確かにこのタイプの方が若干安いのですが、使えるマザーボードもあまり無いしと思っていたら、変換アダプタが登場してきました。でもよく考えたらこの変換アダプタの金額を考えるとSlot1タイプのCeleronの方が安いのです。ところがここでまたまた面白いアイデアを出してきた人がいます。この変換アダプタを改造するとCeleronをDual化して動作させる事ができるというのです。Windows98はまだシングルCPUにしか対応していませんが、NTやBe、UNIXなどはDualCPUに対応しています。これを用いれば非常に廉価にサーバが構築できると言うことで人気が高まっているわけです。いいですね、こういうゲリラは大好きです。
 *86互換チップメーカーがAMDとサイリックス社だけといった時代から、次々と新しいメーカーが生まれてきている現状を見ると、これだけ高度になったCPUの開発がインテルの1/10以下の規模の会社でも出来てしまう不思議さに驚いています。製造技術のミクロン化というのもあるでしょうが、問題はCPU内部のアルゴリズムの開発にあるとすれば、結局はソフトの技術と言うことになるのかな。AMDのK6-3は同一クロックではPentiumIIIを上回る性能であるという話も伝え聞くと、凄いものだと感心してしまいます。
 とにかく、こうした新しい動きに私は少しワクワクしてきました。


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