OMATSURIKOZO HOMEPAGE RANDOM ACCSESS 1999-05
OMATSURIKOZO's talk salon


ランダムアクセス
1999年 5月
連載145回

「PC WAVE」廃刊、
パソコンの辺境は広野か?

ソニー 次世代PlayStationは
リトルモンスターマシンだ


 ゴールデンウィークが目の前に迫ってきています。美しい青葉が山一面を塗り替えてくる季節です。我が家の庭では昨年オランダから買ってきたチューリップが珍しい形で咲き誇っています。世の中の景気はやっと底を打ってきたのではないかと言われていますが、失業率もまだまだ高く、リストラ旋風が猛威を振るっています。我が家においても女房がこの旋風に巻き込まれ、私のパソコンライフもこれまでかと自分勝手な感想を言ったものですから、家族中から顰蹙を買っています。彼女も新しい職場に不満を持ちながらも、そこで精一杯やってみようと思い始めたようで、当面私のパソコンライフも護られそうです。

やっぱりパソコン、売れているのですね


 こんな時期にも関わらず、個人用のパソコンの販売台数は伸びているようですね。この時期は新入学、新社会人となる人たちが多いので、彼らが新しくパソコンを購入しているのかも知れませんが、通年よりも販売台数が伸びているって言うことはどういうことなんでしょうね。多分社会的にパソコンが認知されて、パソコンが使えなかったら仕事にならないと言うイメージになってきていることと、コストパァフォーマンスが飛躍的に高くなって、値頃感が出てきたと言うことだろうと思います。ノートパソコンの価格が高いと言っても25万円程度で最先端に近いパソコンがあり、デスクトップに至っては20万円を切る価格で最先端パソコン、普通に用いるパソコンで言えば、ディスプレィを込めて10万円程度で購入できるわけですから、昔のパソコンを購入した人たちにとっては隔世の想いを抱かざるを得ません。私のこの春、何人もの友人に購入のアドバイスを頼まれました。最近のアドバイスは至って簡単です。それはほとんどの人たちにそこそこの知識があって、その上での質問ですから、それぞれの人の事情に対して答えが出てきます。仕事関係で使おうとする人には、ノートパソコンか液晶デスクトップを薦め、家でゲームまでしたい人にはデスクトップを薦めます。性能については何にこだわっているのかで異なってきますが、たいていの場合その人の予算によって決めればいいと考えています。だって、ワープロ、表計算、インターネットと言った通常のことをするには、現在発売されているどんな最低のCPUでも大丈夫と思っているからです。まさかいくら安いものだと言っても、現在486CPUなんかを付けて売っている店なんかないでしょうからね。最低でもPentium200Mhz以下のものなんて見かけないですから、安心してお買いなさいと言っています。

ノウハウ本にパソコン主流を見る


 こうしたご時世ですから、本屋に行ってもパソコン関係の雑誌や本は大きな売り場を占めてきています。最近Linux関係の本が増えてきたとは思いますが、やはり主流はWindows関係のノウハウ本ですね。Windowsそのもの、LAN関係、インターネット関係も多いですが、一番はアプリケーションのノウハウ本です。私も昔はこうした本をよく購入したもので、当時は「裏マニュアル」とも呼ばれていて、コピー版を手に入れたユーザー達がそのマニュアルを求めて購入したものです。Windows時代になってから、正規購入版でさえあまり詳しいマニュアルを付けなくなり、バージョン5あたりでは10cm以上の厚みのあった「一太郎」でさえ現在は5cm以下のパッケージとなってきました。ある程度使い込んできている人たちが多いという理由だけでなく、価格戦争のあおりやプログラム内部のHELPが充実してきたこともあるのでしょう。でも、やっぱりこうした本が多くあると言うことは、パソコンユーザーというかアプリケーションユーザーの裾野がますます広がってきていることの証なのでしょう。昔は「一太郎」と「123」のノウハウ本が一番多く場所を占めていましたが、現在では「Word」と「Exel」のノウハウ本ばかりという状況で、「123」のノウハウ本などは見つけられなくなってきました。本屋さんを覗けばパソコン関係の主流が見えてくるのかも知れません。

「PC WAVE」廃刊


 これだけ盛況に見えるパソコン関係の出版でも、その底には絶えず潮流が流れていて、澱みに停滞して消えていく本も多いのです。私が長く愛読していた「PC WAVE」と言う雑誌が4月号を最後に消えてしまいました。この雑誌は、DOS/V創世記時代に大陸書房という出版社から生まれたDOS/V関係ムック本から始まったのですが、このときにはこのシリーズは当たっていたものの、出版者が多角経営に乗り出して失敗したために廃刊となってしまいました。幸い当時はDOS/Vブームが続いていて、独特な切り口で展開する辛口な情報誌はマニアの間でしっかりと支えられていたので、別の出版社から生まれ変わることが出来ました。しかし、常に時代は変わって行きます。今回はどうなることでしょう。昔、「ざ・BASIC」と言う雑誌があり、マニア達はバイブルのようにして購読していたものでした。この雑誌はコピープロテクト関係などのアングラ的な情報も多く載せられていましたが、一方ではいち早くMS-DOSの有効性を特集したりとパソコン最先端を自認する人たちにもてはやされたものでした。その当時もやはり「ASCII」のようなオーソドックススタイルの雑誌があり、これはこれで人気がありましたが、「ざ・BASIC」には狂信的と思える読者層があって、パソコン創世記の熱情を一手に集めていたのではないかと思っています。しかし、この雑誌はその性格故にある時代に潰れていってしまいました。「THE COMPUTER」と言う雑誌があり、この雑誌も私の愛読書のひとつでした。この雑誌は田原総一郎が業界トップに鋭くインタビューするコーナーが目玉で、当時機種別に展開されていた、あるいは9801全盛のパソコン世界をもう一つ大きな視点から捉え直そうという姿勢を持った雑誌でした。私はこの雑誌でUNIX、パルアルト、AT互換機などの広い視野を獲得するための情報を得たものでした。しかし、この雑誌も「ガリバーの行方」という9801とスーパーファミコンの最絶頂期を不安視した特集を組んだ後、廃刊となってしまいました。

パソコンオタクが消えていく日


 「お祭り小僧さんが愛読する雑誌は潰れてしまうのですね」というツッコミは仲間内でもありましたが、そう突っ込んだメンバー達はたいてい同じ雑誌、同じ傾向の雑誌の愛読者で、どちらかと言えばオタクっぽいところを持っているようです。つまり、パソコンの発売台数は多少の停滞があったとはいえ、確実に伸び続けているわけで、その結果パソコンユーザーは非常に多くなっているに関わらず、オーソドックスな流れ以外は押し流されてしまうか、澱みに沈んでしまうかといった事になってきているような気がしてなりません。インターネットなどを覗いてみても、これだけ多趣味でこれだけ広範囲の新しい文化が生まれてきているのにと思いつつ、やはりゲリラはゲリラでしかなく、全体の流れというのはやはり大資本とかに牛耳られてしまっているのかと感じざるを得ません。パソコンなんて、半導体を拡販するために副次的に生まれたものなのに、今や一大産業に成り上がり、自分たちの氏素性を忘れて貴族に成り上がった明治維新の薩長田舎侍の姿とダブって見えてきます。問題は彼らだけではなく、彼らを取り巻き彼らを支えていた庶民までが、彼らの高貴性を承認してしまったことです。彼らが従来の価値観を壊し、彼らが新しい価値観を生み出した偉業は認めても、彼らが自分たちが生み出した価値観の継続性のために彼ら自身の高貴性を庶民に押しつけ、その事実を庶民が受け入れたということは、とても問題があることだと思っています。パソコン世界においても同じ事が言えるでしょう。パソコン貴族達はまだまだ完全に足場を固めてしまっているとは言えません。重要なことは、我々パソコンユーザー達が常に懐疑心を持って、広い視野の中でパソコン世界を見つめ続けることが必要だと思っています。少し視点の異なった切り口で情報を収集して発信する雑誌の創刊を期待したいと思っています。

「次世代PlayStation」


 話は少し古いものとなりますが、3月の始めにソニーから「次世代PlaySation」の発表がありました。そのスペックの凄さに驚いてしまいました。
 昔、大森局長から「パソコンはどこかで頭打ちになってしまうのでは...」といった話題が出てきたことがありました。その時、私は「現在のパソコンとは違った形になるかも知れないが、パソコンは成長し、普及するはずだ」と答えたものでした。当時は「パソコンか、ワープロか論争」や「パソコンか、ゲーム機論争」が主流の時代で、私が言いたかったのは汎用機であるパソコンが特化されてワープロやゲーム機になることはあっても、それらが汎用主流機であるパソコンを犯すことはないだろうと思っていたのです。ところが今回のソニーの「次世代PlaySation」のスペックを見ると、ゲーム機がパソコンの領域まで拡大してくるのかとも思い始めたわけです。当時の私には、あの時代のパソコンイメージの延長線上に次世代のパソコンと社会がイメージされていて、任天堂のファミコンの延長線上にはイメージは広がりませんでした。確かにファミコンにはスプライト機能というゲーム開発に必要なグラフィック機能が搭載されていたりしましたが、それは特化製品特有な機能であって、汎用性などは持ち得ないとタカをくくっていたわけです。その後、任天堂がシリコングラフィック社と組んでNINTENDOW64のチップを開発すると聞いたときにも、ゲーム機の開発も凄い時代になったものだとは思いながらも、これらがインテル系チップやPowrPC系のチップを超えるとは想像もしなかったものです。
 発表されたスペックを見てみましょう。
・メインプロセッサ「Emotion Engine」
・レンダリングエンジン「Graphic Synthesizer」
・I/Oプロセッサ
・サウンドチップ「SPU2」
・Direct RDRAM 2個
の6個構成になり、D/AコンバータやPCカード内のモデムチップなどが加わるそうだ。
 「Emotion Engine」(エモーション・エンジン)という128ビットCPUは、東芝とソニーの共同開発によって作られたもので、動作周波数は300MHzで、浮動小数点演算性能は6.2GFLOPS、MPEG2デコードも可能、Pentium III 500MHzより浮動小数点演算性が優れているという。メインメモリはDirect RDRAM 32MBを搭載し、バンド幅は、PC/100規格対応SDRAMの4倍に相当する3.2GB/秒を実現している。メモリバンド幅48GB/秒のグラフィックチップ「Graphic Synthesizer」は、4MBのDRAMセルとコアを1チップに、メモリバンド幅48GB/秒で、3D処理速度はPC向けのグラフィックチップを大幅に上回るそうだ。I/Oプロセッサは、現行「プレイステーション」互換のCPUコアを内蔵して互換性は守り、インターフェイスとしてUSB、IEEE-1394、PCカード対応の入出力を備えるという。
 高度な演算能力、高いグラフィック機能に汎用化されつつあるUSB等のインターフェイスを採用すれば、テレビのみならず、現在パソコン用に出されている各種の周辺機器はそのまま使えてしまう可能性が高いわけです。これにハードディスクを繋いで基本OSを載せてしまえばハイエンドなパソコンになってしまうじゃないですか。ソニーの戦略は多分そこまで考えているのでしょうが、こいつは凄いものになりそうです。
 こうしたモンスターのようなマシンがゲーム機の顔をして登場してくることが凄いのです。パソコンには本体とキーボードとディスプレィ、CD-ROMが付いているとしか思っていない人にとっては、この「次世代PlaySation」は単なるおもちゃとして見えないかも知れませんが、このハードは多くの好き者達に夢を与えてくれることだと思います。発表の時に行ったデモシーンはそのグラフィックの精細な美しさと共に、微妙な陰影と動きにCGを連想させ、しかもそれがリアルタイムに表現されていると言うことで多くの聴衆者が驚きに声を失ったという話を聞きましたが、このスペックのもので開発されたのだったらと頷いてしまいました。ゲーム機として登場させる以上は、その価格設定も当然ドリームキャストくらいが上限で、将来的には1〜2万円台の実売価格で店頭に並ぶ可能性があるわけです。いくらパソコンが安くなったとはいえ、ここまで価格がこなれてくるまでにはまだ時間がかかります。始めから大量に生産することを前提にして初めて可能となるコストとはいえ、ソニーの大冒険はとてつもない夢を感じさせてくれます。私は小さなゲーム機が核となって、どんな周辺機器が繋がるか、その新しい可能性に期待しているところです。



returnreturn

ご覧いただき誠にありがとうございました

All Rights Reserved (C) Copyright 1995, ClubOH, PC-CLUB.