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2000年11月号
連載163

インターネット常時接続に見る
光と影

個人でもリアルになった常時接続
ISDN ADSL CATV どれにする


 朝晩がやっと冷え込んできたと思ったら11月です。あと二月で20世紀は終わりというのに、ようやく秋になったばかりというこの季節感に奇妙な違和感を感じているのは私だけでしょうか。大水害の後には、被害はそれほどでもなかったけれど大地震、つまらない予言者達が「世紀末」と叫んでしまう気持ちも分からないことはありません。でも、多分地球上なんてこんな事の繰り返しだったに違いないと考えれば、高々7、80年しか生きられない私達にとって驚くようなこともどうということもないのでしょう。それでも、加速度的に進行する情報社会化は、お間抜けな森総理の「IT革命」(彼がそれを言うと空虚になってきますね)ではありませんが、確実に全ての産業に影響を及ぼし、良くも悪くも私達の生活を大きく変えてきています。パソコンで20年遊んできた私でさえ、当時はここまでパソコンが世界を変えるとは思わなかったと正直に言います。時代の波に乗り遅れるなと言うよりも、乗らなくては飯が食えなくなるという実感の方が切実な今日この頃です。

誰でも常時接続時代


 今月の話題は「インターネット常時接続時代」から始めましょう。電電公社が法規制に守られ、電話通信網を通話以外に用いることを禁止されていた時代から、それが少しずつ解禁されてパソコン通信が生まれたものの、そのユーザーは国民全体から言えばマイナーな時代が10数年続きました。しかし、インターネット通信網が利用されるやパソコンを通じた通信世界はあっという間に普及してしまいました。今では携帯電話からもインターネット接続ができるわけですが、10年前誰が今の状態を想像したことでしょう。そして、「インターネットは電話線を通じて行うもの」とか「常時接続なんて電話代が高い日本ではまだまだ先の話」と言った常識さえこの1年の間に大きく変わってきました。昨年末、私はインターネット接続をケーブルテレビに変えてしまったという話を書きましたが、その時多分この1年くらいで常時接続の常識が変わっていくだろうと書きました。私の予想以上に動きが速かったのがNTTでしたが、あの巨人でさえも素早く動いたというのは常時接続の世界に乗り遅れるわけにはいかないと情勢を読んだからだろうと思います。

常時接続サービスのおさらい


 ここで、現在提供されている「常時接続サービス」のおさらいをしてみましょう。技術的には電話通信網を利用したものに「フレッツ・ISDN」とADSL技術を用いたものがあり、電話通信網ではないケーブルを利用したCATVと有線放送などがあります。

フレッツ・ISDN


 「フレッツ・ISDN」はISDNを利用したNTTのサービスですが、ISDNについては今さら説明の必要はないでしょう。データ転送速度は最大64Kbpsで現在多くの人が利用している接続方法と接続手順は表面上まったく一緒です。ただ、局内では従来の接続方法とは異なり「地域IP網」と呼ばれるデータ送受信専用のネットワークを通じてアクセスポイントに接続するものですから、ユーザー側とプロバイダ側の両方がその接続網に接続しなければなりません。そのため、ユーザーがこの契約をNTTと交わしても、自分が契約しているプロバイダ側がNTTとこの契約をしていないと接続できません。プロバイダ側としてはこの契約による負担があるため契約をしていないところもあります。そこで、自分が現在契約しているプロバイダがこれで接続できないときには、そんなプロバイダは先の見込みはないなとさっさと逃げだし安いところに変更するのが良いでしょう。ASAHIネットなんて月額450円でこれに対応しています。これで計算すると、ISDNの固定料金は別として、通信費4500円+ASAHIネット450円=4950円で常時接続ができるわけです。つい数年前の2万円に比べるとメチャ安、個人でもあまり無理がなくなる金額になったというわけです。もっともまだまだ安くなっても嬉しいのですがね。このサービスのエリアはまだ限定されているのでサービスを受けたいと思う人は最寄りのNTTに問い合わせてみてください。現在大都市ばかりでなく、中小の都市でもサービスはどんどん拡大してきていますから、期待はできるでしょうね。

ADSL接続サービス


 同じく電話通信網を利用しながら、異なる通信技術を使った方法にADSLがあります。これについても何度か書いたことがありますが、ここでおさらい。日本では高速通信はデジタル回線だとばかりNTTはISDNに走ったわけですが、アメリカではデジタル回線はあまり普及しませんでした。彼等は従来のアナログ回線を使って何とか高速通信が可能になる技術の方に走ったわけです。昔、パソコン通信をしていた頃アナログ回線の限界は2400bpsと聞いていたのにどうして同じ回線を使うのに高速通信が可能になったの、電話回線を使ったら通信中は電話が繋がらないではと言う不安を感じる人もいるでしょう。結論から言うと、通信速度は下り512Kbps上り200Kbpsと非対称ではあるものの非常に速く、電話通話とインターネット通信が同時に同じ回線を使って行えます。しかも通信方式がユーザーと事業者の間が1:1関係となるため、他の接続方法のように同一地域でたくさんのユーザーがぶら下がると速度が落ちるという事はありません。どうしてこんな事ができたかといえば、メタルケーブル(従来電話線)を用い、通話に用いられている低周波帯域(4kHz)に対して高速データ通信用に高周波帯域(500kHz〜1GHz)を利用することによって、互いに干渉することがなく同時に接続することを可能にしている。このように複数の変調した信号を異なる周波数帯域で同時に送る方式を「ブロードバンド転送」と言いますが、これを実現するためには電話局とユーザー側にそれぞれADSL対応の設備が必要となってきます。ISDNデジタル回線に走っていたNTTに取っては迷惑な話で、しかもこの設備を付ければ売り上げが上がるかと言えば、電話局に設置したADSL対応の設備から先は接続業者に信号が廻ってしまうために従来電話線を利用してもインターネット接続に伴う電話料もなくなってしまいます。こんな馬鹿な話はないとばかりNTTは乗り気ではなかったので、日本ではこの技術は普及しないのかなと思っていたら、規制緩和はここでも役立ちました。大都市では東京めたりっく通信やイー・アクセスといった会社がサービスを開始してきました。この方式の設備は、ユーザー側に「スプリッタ」という変調交換機とADSL対応モデムが必要で、電話局にはスプリッタの取り付けが必要となってきます。この技術の故に、現在の家庭の電話線が光ファイバーやISDNでは利用できません。通信費としては、初期費用として3万円程度と事業者に月額5500円程度ということになっていますが、NTTにも当然通話基本料の他ADSL基本料800円が月額必要となります。当然、通信費はNTTに請求されることはありません。この接続の最大の魅力は通信速度の速さにあるといえるでしょうね。

CATV接続サービス


 次は電話回線以外を利用した常時接続ですが、これのひとつに私の家でも利用しているCATVを利用したものと、まだサービスとしてアナウンスされていないもののすぐ実現するだろうものに有線放送回線利用のものがあります。このふたつの考え方は同じものです。つまり、家庭まで回線を繋いでいるのは電話線ばかりではないよ、CATVや有線回線でもインターネットが接続できるよと言うコンセプトです。こんな事を言えば、電気配線こそ各家庭に必ず接続されているものです。この配線を通じてインターネットに接続する技術というのもあるというのですから、興味津々ですがこの話はまた後にしましょう。話をCATVに戻すことにしましょう。CATVでは同軸ケーブルや光ケーブルを利用して各家庭に多チャンネルのコンテンツを配信しているわけですが、このケーブルを通じて送受信できる周波数帯域の幅は非常に広く、少々多チャンネル化したとしてもまだまだ余裕があるわけです。そこで余裕のある周波数帯域を利用してインターネット接続の送受信をしようというわけです。ですから、このサービスではCATV局が通信事業者とプロバイダを兼ねるわけですから、費用は一元化されてしまいます。現在サービスを提供しているCATVでは、初期費用40000円程度、接続料月額5000〜6000円と言ったものです。他のサービスに比べて安いと言ったものではないですが、「フレッツ・ISDN」などはCATVの料金を見て設定をしたのではと思わせるようなものです。まあ、接続料は現在のところ横並びといったところでしょうが、有線放送などが突き抜けてくれるとまた面白いことになるのですが...。CATVの接続技術というのは、CATV局内に設けられたセンターモデムをゲートウェイとした巨大なLAN網にそれぞれのユーザーが配置されるといったイメージで、各家庭には分配機が設置され、インターネット用にはケーブルモデム、テレビコンテンツ用にはホームターミナルが設けられます。パソコンにイーサネットカード(LANカード)を取り付け、ケーブルモデムと繋ぐだけでインターネットと接続してしまうので非常に簡単です。通信速度に関して言えば64Kbps〜514KbpsとISDN以上に高速ですが、通信速度の速いものを契約すると高額になります。現在接続しているユーザー数が少ないために高速な接続が可能となっているところでも、ユーザー数が増えると速度が落ちる可能性がありますが、ISDNよりは速いでしょうね。問題はセキュリティです。このことは後で話しますが、常時接続をすると常に家庭のパソコンが外に繋がっているため、外部からの侵入が用意になるわけです。電話通信網を利用した接続方法の場合、インターネットに接続したときに割り当てられる住所であるIPアドレスが接続のたびに変更されるわけですが、CATVのようにLAN構造で接続される接続形態ではこの住所が固定される可能性が強いため、特にセキュリティに気を付ける必要があるのです。

セキュリティにご用心
「グローバルIP」と「プライベートIP」


 もう誰もご存じなように、インターネットに接続された器機には「グローバルIP」という3桁*4の数字が割り当てられます。この数字によって接続された機器の住所が確定するわけですが、ダイヤルアップ接続では接続した時点でプロバイダが自動的に余っているアドレスを割り当ててくれますから、1度切断して再び接続するとこの「グローバルIP」は変わってしまいます。しかし、接続中においては固有の「グローバルIP」を貰っているわけです。ネットワークゲームやチャットなどはこれを利用してお互いを認識しているわけですが、常時接続するとこの「グローバルIP」が固定してしまうのです。もちろん、ダイアルアップ方式ではいくら常時接続とはいえ一度切断して再接続すれば同じく「グローバルIP」は変化します。ところが常時接続のサーバなどではこの「グローバルIP」は確立しているため、ハッカーなどの攻撃にさらされやすいわけです。こうしたサーバにおいては常にセキュリティという概念が強く、ファイアウォール機能などを用いているわけですが、個人が常時接続できる時代になるとセキュリティ概念がないまま浮かれて繋ぎっぱなしにしてしまう人がいます。家庭内にLANを構築していて「ファイルとプリンタの共有」を無造作にフルアクセスにしたまま、常時接続に浮かれていると丸裸でベランダに立っていると同じ事になってしまいます。いつでも接続できるわけですから、マメに切断して再接続する方がいいですよ。
 ところがCATVではちょっと事情が異なります。CATVのインターネット接続では巨大なLAN環境の中に各家庭のパソコンが繋がっているため、固有の住所である「グローバルIP」が与えられておらず、CATV管内だけで認識できる「プライベートIP」が割り当てられている可能性があります。では、CATVネットでは世界とダイレクトに接続されていないからセキュリティは大丈夫なのかといえば、やはり同じ事といえます。巨大なLAN構造という団地内ではやはり共有設定を考えておかないと裸でベランダに立つことには変わりありません。しかも、団地内の住所である「プライベートIP」は固定されている可能性が高いだけ、危険なメンバーが潜んでいるときにはコワイとも言えます。つい最近CATVに接続サービスを受けていた同僚がトロイの木馬型ウィルス(note.comを作る)攻撃を受けてしまいました。「プライベートIP」のもう一つの問題点に、「グローバルIP」が与えられていないため、ネットワークゲームなどの「グローバルIP」を利用したインターネットサービスが受けられない可能性があることも知っておきましょう。もちろん、CATV局によっては様々なサービスがありますから、「グローバルIP」も貰えるかもしれませんが、余分なコストがかかる可能性があります。
 まあ、常時接続サービスにおいては、メリットも多いかわり危険性も含んでいると言うことも承知しておく必要があるでしょう。また、インターネットへの接続方法がひとつしかないというのではなく、複数のものも考えておく方がいいのかもしれませんね。



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