OMATSURIKOZO's talk salon

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2002年8月号
連載184

インターネット電話
どうやら普及期に入り始めたよ


総務省がIP電話に「050」
KDDIが企業向けサービス,続いて...

 夏の初めまではちょっと不順な天気でしたが、やっぱり日本の夏は蒸し暑い。スーツ姿で数百メートルも歩けば汗でシャツやズボンが張り付いてくる毎日です。もうすぐ夏休みだと自分を勇気づけて、ひと頑張りです。子供達の夏休みが始まれば、毎朝ラジオ体操に付き合わなくてはなりません。自分の子供達が小学生の頃にはオヤジや町内会の人達に任せておけばよかったのですが、いつの間にか町内の役員になっていて、子供達の前でラジオ体操をしなくてはならない身になっていました。頑張って早起きをしよう。

今月は久しぶりにトレンドを


 さて、この数ヶ月、私のドジを書き連ねてきましたが、少し時代の先端についても触れなくてはと思います。なにしろ、最近はいろいろと忙しくてパソコンだけには拘わっていられないため、情報が今ひとつ遅れてしまっているのかな、とも反省をするのですが、今さら細かい変化について語ろうとは思わなくなってきています。そこそこの話題は出てきているのですが、パソコン環境も円熟期に入ったというか、大きな技術的な変換という節目が現れにくくなってきていますね。「明日はこれだ」なんて事を言っても「そんなもの、当たり前じゃないか」とか、「こんなものが登場してきたよ」と言っても「分かっているよ」とかしか言われない時代に突入したようです。どうも大きな節目が現れにくくなってきたようです。そんな中で、今月取り上げようと考えているのが、インターネット電話です。これはどうも新しく大きな流れが始まろうとしているのではないかと思ってしまうからです。

少しおさらいを


 「何を今さらインターネット電話なんだ」なんて声も聞こえてくるのですが、パソコン界だけで自己完結していたところのインターネット電話から一般電話への変換が起ころうとしているのではと言う流れを感じたのです。
 最初にインターネット電話についておさらいをしてみましょう。インターネット電話とは、別名IP電話とも呼ばれ、インターネットの通信基準(IP)でデジタル化した音声をパケットと呼ばれる細切れの単位に分けてネット網で伝送、受信側で復元する方式のことです。VoIP(Voice over Internet Protocol)という技術を使っています。ネット網で効率的に音声をやり取りするため、通信料金を安くでき、市内や市外また海外といった通話区分の意味がなくなってしまいます。つまり、市内にかけても海外にかけても料金に差が出てこない世界があるわけです。音声だけでなく、画像の伝送さえも可能となります。Windowsでは「MSN Messenger Service」というサービスでこれをサポートしてきていますが、これはあくまでパソコン同士あるいはパソコンから電話へとインターネット経由でやり取りすることを目的としています。これではいくらインターネットという解放された情報空間であっても、既存の電話通信網とうまくリンクされていなくては一般的には使い物にならない、限られた人しか利用しないといったものです。これが普通の電話機と普通の電話機の間に入り、おじいちゃんやおばあちゃんまでが今まで使っていた電話機で普通の電話のようにインターネット電話ができる世界が始まろうとしてきているのです。

インターネット電話はパソコンだけのものじゃなくなってきた


 10年前、だれがこんなにたくさんの人が携帯電話を利用するなんて考えたことでしょう。携帯電話というものは特別なものであって、普通の人は家庭の電話機や公衆電話を使って電話するものだと信じていたはずですが、今では携帯電話を利用した通話の方が多くなってきたのではと思うほどです。これだって、携帯電話通ししか通話ができないのだったらここまで普及はしなかったことでしょう。つまり、新しい技術が普及するためには既存の技術と互換性を持つ必要があるわけです。どうもインターネット電話はその領域に入ってきたようです。昨年、フュージュンという会社はインターネット電話の原理を利用して市外通話料金を非常に抑えたものとして一般電話の加入者を大幅に増やしてきましたが、どうもこの流れはもっともっと大きくなってきたようです。ヤフーBbが始めたインターネット通話では、契約者同士の通話は無料だということです。総務庁は、インターネット電話そのものに電話番号を与えようと言う提言をしています。

「IPv4」から「IPv6」の意味


 今月はこうしたインターネット電話の新しい流れについて少しまとめてみようと思っています。その前に「IPv4 から IPv6」という流れについて少しおさらいをしておく必要があるしょう。インターネット電話のキーワードには、「一般電話との通話」というものと、「IPv4 から IPv6という流れ」というものが複合して来ています。「一般電話との通話」というものは、技術的な問題と言う以上には「普及」の最低インフラであり最低技術でもありますが、「IPv4 から IPv6という流れ」というものはそれを広げる技術的なインフラといえるでしょう。「IPアドレス」という言葉については効いたことがあるでしょう。「そんなことまでおまえから聞く必要がない」という人は飛ばし読みしてください。インターネットでの住所が「IPアドレス」ですね。「255,255,255,255」といった数字に何か見覚えがありませんか。IPv4のアドレスです。これが一杯になってきたのです。そこでもっと大きな容量を持った住所管理が必要になってIPv6が生まれてきたわけです。現在、インターネットでは2つの住所管理が並立して存在していますが、将来的にはIPv6での住所管理が主流になってきます。家電業界なんかは、全ての家電まで住所(IPアドレス)をつけて、家全体をインターネットを通じて管理しようと考えているとのことですね。このIPv6の普及こそがインターネット電話の普及に関係あるのです。現在インターネットに接続しているほとんどのユーザーは、絶対的なアドレスであるIPアドレスは持っていなくて、プロバイダに接続するたびにプロバイダがつけた仮のIPアドレスでインターネットに接続されています。これをインターネット電話でやれば、通話をかけることは可能ですが受けるための絶対的なIPアドレスを持っていない、つまり公衆電話に電話がかけられないと言う事情によく似た世界があったわけです。ところが、絶対的なアドレスが増えたIPv6の世界では個々のインターネット電話に絶対的な番号が付加できることになるのです。今、総務省はこのインターネット電話に「050」という番号を与えようとしています。では、携帯電話の頭が「090」とか「080」といった番号がついている世界と同じように、「050」は万能なのかという疑問にぶち当たってしまいます。
 ちょっとだけ IP電話についての説明をしておきましょう。IP電話は,パケットのサイズが小さく(通常100バイト以下),比較的数が多い(50パケット/秒)という特徴があります。会話をスムーズに進められるようにするには,全体の遅延時間を減らし,リアルタイム性能を上げなければならない。そのため,音声を小さく細切れにしてパケットにのせる必要があるのです。ところが、音声を細切れにすると,音声データそのものであるペイロードより,ヘッダーの方が大きくなってしまうという逆転が生じてしまい、消費される帯域の半分以上が,IP,UDP,RTPの各ヘッダーに費やされることになる。簡単に言えば、各パケット毎に情報と送り先のデータが併走される必要があるため、非常に効率が悪いわけで、音声が悪くなる可能性と効率の悪さがあるわけです。これがIPv4の場合、つまり絶対的な住所数が少ないIPv4でそうなら、もっともっと住所数が大きくなったIPv6ではますます効率が悪くなるのではと思うのですが、これがちょっと事情が異なってくるわけです。ところが、IPv6の住所管理では事情が異なり、逆にパケット効率は良くなるのです。「えぇーっと」と驚くでしょうが、実はIPv6の方がインターネット電話の効率は良くなるのです。

IPv6は「050」


 IP はすべてユニークなアドレスが使われることが本来の使い方だった。ところが,IPv4 のアドレスが十分に割り当てて貰えないという理由で,エンドユーザーは NAPT を経由してプライベート・アドレスを使うのが当然という(間違った)“常識”ができてしまっていたのです。残念ながら,NAPT はIP電話のような双方向通信には向きません。だからインターネットと NAPT + FW(ファイアウォール)で接続されたオフィスのLANやしばしばCATVのインターネット接続では、通常インターネット電話を利用できません。インターネットゲームもしかりです。インターネット電話を利用するためには,NAPTを使わないことと,グローバル・アドレスを使うことという現状の常識に合わない条件が求められる。これが,インターネット電話を導入する際の大きな障害となってたわけです。IPv6 でグローバル・アドレス(絶対アドレス)が使えるようになると,これらの問題は一気に解消されます。IPv6 を LAN に導入し,v4/v6のデュアル環境にすることで,あっさりとLANからインターネット電話が利用できるようになるのです。もちろん通話相手もIPv6に対応している必要があるなど,制約はまだまだきついのですが、インターネット電話を利用するためIPv6は使えるのです。これが、総務省が薦めているインターネット電話なのですが、IPv6規格がまだ完全に普及してないのも事実です。パソコンのOS、WindowsはまだIPv6をサポートしていません。

携帯電話への挑戦


 インターネット電話の普及を現在妨げているもう一つの理由に、実は「携帯電話」との接続があるのです。ヤフーのBB Phoneもイーアクセスも,現状携帯電話にはかけられません。これは技術的な問題かと言えば、実はそうではなく、単純にコストの問題なのです。携帯電話へかける際の料金設定を,携帯キャリアが握っているところにあるようです。つまり、これだけ普及してしまった携帯電話とのアクセスができない電話なんて「一般電話」とは呼べないわけで、NTTの固定電話とリプレースできる存在にならない限り、インターネット電話の完全普及はないわけです。これは可能なのでしょうか。「固定(電話から携帯電話にかけた場合)と同じ,あるいは高くなってしまってもいいなら,すぐにでも(IP電話による)サービスができる」とイーアクセスは言っています。実際,ダイヤルパッドジャパンとの提携によりBIGLOBEが提供している「dialpadインターネット電話」では携帯電話への通話も可能ですが,78円/3分とNTT固定電話からかけるのと大差ない料金になっているのです。

携帯電話の壁も...


 低料金がウリのIP電話だけに,携帯電話会社の言い値ではサービスのメリットが薄いということがネックとなっているだけなのです。ところが、一般固定電話とIP電話との接続料金については,NTTはルールをある程度オープンにしていますが、携帯電話との接続は各携帯キャリアと個別に交渉する必要があるといいながら「事実上,携帯会社が価格を決定してしまっている」状況のようです。どうも、昔NTTに遣られた恨みをインターネット電話に持ってきているようですね。しかし,携帯キャリアが一律に高いかというとそうでもないようで、そこにからくりがあるようなのです。要するに、携帯電話でもそうなのですが、一般固定電話と携帯電話の接続料に関してはかなりチャージ料に差があるのです。これは携帯電話各社があまり公表したがらない事実ですが、一般固定電話から携帯電話に接続したとき、かなり高い接続料がかかっているのです。同じ会社の携帯電話同士なら極めて安い接続料になっていても、一般固定電話から携帯電話に接続すると莫大な接続料がかけられていて、それはかけた本人が支払ってくれる携帯会社の公にしたくない収入になっているのです。こうした既成事実から携帯キャリアはIP電話からの接続料を安くしたくないわけです。
 もう言わなくても分かっているように、IP電話は既成の通信世界をひっくり返すようなシステムを持っているために、既成の通信会社にとっては癌のようなものなのです。しかし、時代はいつまでも留まっていません。総務省はIP電話に「050」というアドレスを与えようと言っていますし、KDDIはこの秋から企業相手にサービスを開始し、来年には個人相手にもサービスを開始すると言っています。当然今のNTTは負けてはいません。このサービスを始めてくることでしょう。インターネットの接続や携帯電話の普及がこの数年の間に革命のような動きをしたのと同じように、IP電話も変わってくることでしょうね。注目しておきましょう。乗り遅れると損をしますよ。


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