OMATSURIKOZO's talk salon


ランダムアクセス 2003年3月号
連載191

DivX再生プレイヤー
25,700円で登場


ますますパソコンはホームシアターに
古い機種の処分に困ってしまう


お祭り小僧のランダム・アクセス

 気象庁の暖冬の予報にもかかわらず、とても厳しい寒さが続いた冬でしたね。もっとも季節的にはもう春が目の前ですが、皆さん風邪などを引かないで頑張っているでしょうか。

 私は1月の末から急にロンドンから呼び出しを受けて冬のヨーロッパに行って来ました。ちょうど日本も寒波に襲われると言うことだったので、日本もヨーロッパもあまり変わらないかと思いながら出かけたのですが、やっぱりヨーロッパの冬は寒かったです。パウダーのような雪が横殴りに吹き付けてきて、マフラーをもってきていて良かったと思ったわけです。ロンドンからオランダのデンハーグに廻り、シュケヴェニュンゲンという海岸沿いのホテルに泊まったのですが、冬の北海の雰囲気は日本海に似て、荒涼として何か身につまされるものがこみ上げてきたものでした。仕事上で思いがけないチャンスをもらったのですが、急な仕事のため今頭を抱えているところです。

Divx再生DVDプレーヤー

 さて、そんな仕事上のゴタゴタを抱えながらも今月の「ランダム・アクセス」を進めて行かなくてはなりません。パソコン雑誌に目を通す時間もあまりなく、パソコンネタもなかなか出てきませんが、何かネタを見つけてTOSHI先生の追随を振り切らなくてはなりません。TOSHI先生、おめでとう「祝15周年」!

 このところの私の話題といえばDivx一辺倒ですが、最初の話題はやはりDivxから。私が居間でDivx映画を見るためにキューブパソコンを作ろうと思い立った頃、Divxも楽しめるDVDプレーヤーが発売されるというニュースが流れました。http://www.vertexlink.co.jp/product/multimedia/kiss/dp-450/。値段は約5万円。キューブパソコンの予算とは大きくは変わらないものの、どんどんバージョンアップされて行くであろうDivxコーディックにどのように対応していくのだろうと言う不安と、心臓部があのSigmaDesigns社と言うことではじめから無視したわけです。確かにSigmaDesigns社はMpeg動画関係に関してはかなり積極的な動きを見せるのですが、ここの製品の購入は「先物買いの銭失い」という結果を招くことが多かったものですから、触らぬ神に祟りなしと決め込んだわけです。で、結局キューブパソコンからプラズマTVへと足を踏み外して(?)しまったのです。

 ところがここに来て、長瀬産業から新製品が登場しました。http://www.transtechnology.co.jp/products/hard/det/dvd-v880.html。価格設定がなかなかいいではないですか。DVDプレーヤーの価格が下がってきたとはいえ、Divxコーディックまでサポートして25700円というのはリーズナブルと思ってしまうのは私だけでしょうか。

◆製品仕様

製品型番    DVD-V880

対応ディスク  DVD、DVD-R、DVD-RW、DVD+RW、SVCD、VCD、CD、CD-R、CD-RW

対応フォーマット DVD、MPEG1、MPEG2、MPEG4(DivX?4.02、5.02)、WMA、MP3、JPEG PictureCD、Audio CD、VCD、SVCD

ビデオ出力   プログレッシブスキャン、NTSC/PAL切替、コンポジット、S-Video

スクリーンアスペクト比  4:3、16:9(ワイド)

オーディオ出力  ステレオアナログ、S/PDIFデジタル(オプティカル端子・PDIF同軸)

外形寸法 430mm(W)×300mm(D)×68mm(H)

電源 100V-240V ±10%、50/60Hz、20W

同梱品 リモートコントローラ 、RCA-RCAケーブル、電源コード 、日本語マニュアル

という仕様が発表されています。もっとも、DivX?っていうのはどのバージョンをサポートしているのか、あるいは将来的にもフラッシュROMなどでサポートする意味なのか、まだ測りかねているところはあるのですが、5.02はサポートされているようです。

 これがもう少し前に発表されていたなら、これとプロジェクターを選んでいたかもしれないなと思ってしまいました。誰か購入されたら、レポートしてください。

スマートディスプレイってなーに?

 さて次は、このところ、パソコン世界に登場してきた新しいコンシューマ向けパソコン「タブレットパソコン」「スマートディスプレイ」というものについて考えてみました。Microsoftも色々仕掛けてきますね。実は、「タブレットパソコン」については私はほとんど関心がなかったのです。ノートパソコンではなく、何故タブレットが必要なのかという必然性に疑問があるわけで、キーボード操作になれない人向けにタッチパネルによる操作というコンセプトというもの以上が見えてこなかったのです。タッチパネル操作にしたからといって、どれだけの人が使うのでしょう。メーカーもパソコンの売り上げが鈍化・減少した今、何でもいいから目新しいものが欲しいとばかり飛びついたのでしょうが、マーケット対象が私には見えてこなかったのです。続いて発表されたのが、「スマートディスプレイ」。この概念は、電話の親機・子機の関係をパソコンにも適用しようと言うもので、Windows XP Professionalを導入しているパソコンを親機として、「Windows CE for Smart Displays」をOSとして導入したタブレットタイプのパソコンを子機として、両者を無線で繋ぐことによって家庭内のどこでもパソコンが使えるというものだそうです。 http://www.microsoft.com/japan/windowsxp/smartdisplay/

無線の時代になってしまいましたね

 有線LANが家庭内にまで入りだしてまだ5年も経ちませんが、パソコン通しを繋いで使おうというコンセプトはどんどん進化してきているのですね。インターネット接続が単独のマシンだけで用いられていた時代から、ルータの普及によって家庭内の複数のマシンからでも自由にインターネット環境にアクセスする時代に変わり、このルータが有線から無線に転じ始めてまだ2年も経ちません。私が無線LANを導入したのが2001年の春ですから、マニアチックに始める人と普及期に導入する人との時間的な差というものがほとんどなくなりつつあるというのが私の実感です。10年前の頃には、マニアチックなメンバー達が高い機器を購入して、しかもいろいろと試行錯誤を繰り返した後、少しずつ機器の価格が下がり始め、ちょっと好奇心の強い人達がそれに続き、しばらくした後に爆発的に普及してくると言ったものでしたが、今ではこのサイクルは1年から2年の間に起こってしまっているようです。CD-Rの普及はしばらくかかりましたが、DVD-Rの普及は多分この1年でしょうね。YahooBBのモデムにははじめから無線セットまで用意されていますから、家庭内無線環境というのはあっという間に一般化してくる可能性があります。

 こうした時代に、ルータを通じてそれぞれのパソコンが接続されるというシステム構成から、ひとつのメインパソコンを利用して子機を増やそうというコンセプトの提案はなかなか面白そうとは思うのですが、さてさてこれが本当にそのまま普及するかどうかは別問題です。しかし、新しい概念の始まりとしては非常に興味深いものを感じたのです。タッチパネルディスプレイという概念は「タブレットパソコン」とも通じます。Microsoftはこのタッチパネルを家庭内に持ち込む方向で、「タブレットパソコン」を出してきたのかな。もっとも同じタッチパネル方式といっても、タブレットとスマートディスプレイとは感知方式に違いがあるようですが、向かっている方向というのはキーボードレスと言うことでしょうか。仕事の関係の操作盤は現在ほとんどタッチパネル、ザウルスなどのPDAもペン入力とキーボードレスの方向は分かるものの、わたしにはどうもなじめないものがあります。

家電とパソコン

 とはいえ「スマートディスプレイ」には別の可能性、つまり家電とパソコンの融合への可能性が内蔵されているように感じたのです。現在のパソコンはまだまだ不安定でしばしば落ちてしまうことが多いため、家電と融合させた場合には不安でしようがないと言った懸念もあります。しかし、こんなにもインターネット環境が広がり、家庭内の各家電も単独での使用から複合的な形に発展してくることは明らかでしょう。私の家のプラズマTVを導入した時にも、このチューナーにケーブルTV、ビデオ、DVD-ROM、パソコンなどを次々に接続しましたが、AV関係の機器ではこの融合化は極めて早い時期に進んでいくでしょう。こうした実験が電気や家電との融合をリアルにさせてくる可能性は高いと思います。まあ、もっともそのような時代においてはパソコンが現在のスタイルのままのものから変わったものになっているかもしれません。というより、私のイメージでは、大型ディスプレイやキーボードなどを持たないサーバマシンが1台導入されて、現在のパソコンのように用いられるものや「スマートディスプレイ」概念のパソコン、あるいはリモコンなどが接続されるのだろうなと言ったものです。

Microsoftの野望は???

 Microsoftがオフィスや家庭に提案した多くの概念は未だ実用化されたものはありません。Xboxにしてしかりです。しかし、彼らはとにかく次世代の家庭・オフィスの基本コンセプトを作り上げたいと考えているのでしょう。こうしたパソコンから家電・オフィスまでの電子機器統合の流れはどこかで大きく動き出すのでしょうが、さていつどんな形で動き出すのでしょうかね。パソコン世界ではチャンピオンとなったMicrosoftとはいえ、オフィス・家庭全てを射程には難しいでしょう。

各国政府とWindows

 話を少し戻してみると昨年頃から、各国政府がMicrosoftのWindowsを公的機関のOSから閉め出そうという動きが出てきています。これは、パソコン世界に絞って考えてもMicrosoftのひとり勝ちは恐ろしいと考え始めた各国政府が、オープンソースで構築できるLinuxを持ち上げ始めたわけです。共通のOS願望と市場のシェアを獲得しているOSの戦いは今に限ったことではありません。日本だけに限っても、市場を独占していた98DOSと旧文部省との戦い、NEC対家電連合軍の戦いなど歴史は繰り返されてきています。しかし、今度の公的機関のOSにおけるWindows対Linuxの戦いは、次元が異なったものへと変わってきているように思います。単純なOSであったDOS時代においては、共通のOSというものは非常に求められるものでしたが、現在のWindows環境は共通のOSとしては確実な位置を占めたものの、その普及度・そのブラックボックス化は10年以上前とは完全に異なってきました。政府機関のコンピュータ利用度というのが、大型コンピュータから緩やかにパソコンのネットワークへと変わってきている、しかもその重要度は電子政府まで視野に入れたものとなってきているという事実があります。つまり、もはや単純なパソコン世界の問題ではなくなり、パソコンOSは政治の問題となってきているという事です。

 日本政府の意向は、「次世代の技術の中核をアメリカに牛耳られたくない」つまり「技術立国であった日本の屋台骨が危ないから、ウインテルを排除したい」と言うことなのでしょうが、各国政府は「こんなにブラックBOX化してしまったOSを国の中核システムとして採用していたら、情報漏洩に繋がる」と畏れ始めていると言うことなのでしょうね。Microsoftは慌てて「情報公開に努める」というコメントを出しましたが、これに対して各国政府の反応はどうなのか、私は知りません。しかし、インターネットや経済に見られるグローバリズムがここまで進んでしまった21世紀、国民国家とグローバリズムの対立は面白い見物です。ナショナリストではない私にしてみれば、「この戦争の行方はいかに」と高みの見物もできますが、Microsoftの独占が単なるパソコン世界のものでなくなっている現状を考えれば、単純に「ウインテル=アメリカ」という図式以上に「ひとつの正義」に収斂されてしまう世界情勢の怖さを感じてしまいます。

 様々な正義が乱立してしまう時代も困ったものですが、ひとつの正義だけが正しいと言い始める時代も恐ろしいものです。特にその分野が次世代の中核となろうとしている技術であればなおさらのことです。ここはLinuxに頑張ってもらわないといけないのかもしれません。


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