OMATSURIKOZO's talk salon


ランダムアクセス 2004年3月号
連載203回

インターネット株取引は
今や花盛り

デイトレーダーへの私の過酷な道
 


お祭り小僧のランダム・アクセス

 厳しい寒さが続く年だと思っていたら、急に春めいてきたり、季節の移ろいというものは思いがけないことが多いです。会社に行く途中の山々は、少しずつ木々の色がかすんだように彩り始めてきました。春はもうすぐのところまでやってきています。皆さんお元気ですか。

 私はこのところ大変忙しく、なかなかパソコンに時間をとることができません。それでもちょっとの時間を利用してハードディスクを買い足したり、映画をダウンロードしたりと、パソコンに触る時間を工夫していますが、本格的にパソコン遊びをするという時間までは作れません。「じゃあ、今月は『ランダム・アクセス』はお休み」というわけには行きません。局長から催促の電話が飛び込んできます。

インターネット株取引に手を出した理由

 と言うことで、今月は「インターネット株取引」のお話をしてみましょう。堅実な皆さんは、株取引などという危険な行為には走っていないでしょうが、「株取引」と「インターネット」が結合したとき、かなり面白い世界が始まっているのですよ。5年ほど前、少し小金を増やせないかと「先物取引」に手を出してしまい大損をしてしまったのですが、「インターネット株取引」なら元を取り返せるのではないかと始めたのです。

株取引手数料

 ちょうどその頃「株取引」の法改正があり、株式取引の手数料が自由化されたのです。以前の法律では、株取引は全て証券会社に依頼して、かなりの手数料を払っていました。例を挙げるとすると、1株1000円の株を購入したとすると、取引最低単位の1000株(多くはそうですが、現在では取引最低単位が100株のものがあったり、ミニ株もあります)で、まず100万円必要です。その上に手数料の1.1%である11000円も払わされます。この株が少し上がったから売ろうとすると、「5円上がったところで売って」と頼んだら、100万円が105万円で取り引きされても、ここでまた手数料11000円が引かれます。その上に税金がかかってきます。つまり、取引として5万円の利益が出ていても手元に入る金額は5万円−手数料2回分−税金=2万円程度となっていました。また、税金も取引高に対してかかってくるため、損切りをして90万円で売っても手元に入る金額に税金がかかっていました。つまり、昔の取引ではかなりの値上がりをしないことには元が取れない制度になっていたわけです。まあ、競輪・競馬の世界でも胴元である政府が25%取り上げているのですから、損をするのが当たり前と言ったところでしょうか。

取引手数料が大幅に下がった

 ところが法改正によって、株式取引の手数料は各社自由に設定しても良いと言うことになり、大幅な値下がりとなりました。また、株式取引を行うとき、証券会社の人が重要な情報を持ってきてくれるから彼らと付き合うために手数料は仕方ないと思っていた人達の他に、「彼らはクソ株を俺たちに廻し、自分たちの本当に儲かる株を隠している」とか、「あいつらと付き合ったら付き合い料を払わされる」と考えていた人たちにとっては、「インターネット取引」は好都合なものになったわけです。従来の証券会社では人件費を維持していくためにかなりの手数料を取らざるを得ないのですが、この法改正からどんどん生まれた新しい会社は、インターネット取引を進めることによって人件費をかけないから手数料はどんと下げたものになっています。ちょっとインターネットで「株式取引手数料」と入れて検索してみると、各社の手数料が表示されていますが、大体100万円程度の取引なら1000円から1500円です。つまり、取引手数料は1/10に下がっています。その上、税金も源泉徴収のような形で取り上げるものだけでなく、利益だけにかけるというものを選択することができますから、利益は非常に上げやすくなってきています。先ほどの取引を振り返ってみると、5万円−3千円−利益の10%税金=4.2万円となります。昔の法律では、2%の値上がりで売っても損が出ていましたが、今の法律では2万円−3千円−利益の10%税金=1.5万円の利益が出ます。

 ということで、かなりの素人達がこの「インターネット株式取引」の世界に入り込んできました。私もそのひとりですが。日経新聞を読むと、この個人投資家達が株式取引の流れを変えてきているとあります。特集を組んでいたなかで、1年間の取引で1000万円の元手で1000万円を稼ぎ出したとか、会社を辞めて投資生活に突入して1億円を上げたとか、名古屋で若くして株で儲けすぎたからとビルの上から1000万円の札をばらまいたとかの話が出ています。まあ、こんな人達は特別な人達なのでしょうが、機関投資家達が牛耳っていたところの株式取引の常識は、だんだんと変化してきているようです。セミプロ化した個人投資家を「デイトレーダー」とという名称で読んでいますが、彼らは1日パソコンの前に座って取引の流れをみながら、証券会社の連中などを相手にしないで独自の取引カンを養い、利益を出そうとしているのでしょう。

デートレーダーってバチプロと同じ?

 私の年齢もだんだん定年が見え隠れする年になってきました。老後のことを考えると、どのような人生を送るべきか、年金が貰えるまでどうして暮らしていくべきかなどと言うことも考えざるを得なくなってきたわけです。政府は65才まで働ける社会をなんて言っていますが、自分たちの無策を私達国民に押しつけてきているだけで、普通の社員が60歳以上になって働かせてもらうとなれば給料は半額になってしまいます。こんな理不尽なところに勤めるのなら、自分の生活費は自分で稼ぎ出すぞと言う人達も生まれてきます。私は、私の部下に「俺は60才になったらさっさと会社を辞めて、デイトレーダーになるのだ」とかっこよく宣言したつもりだったのですが、「ところでデートレーダーって何ですか」と問い直され、「パソコンの前に座って株取引をする人だ」と答えたところ、「それってパチプロと同じじゃないですか」と突っ込まれてしまいました。「バチプロとは扱う金が違うのだ」と私が叫んでみたところで、結局イスに座って日銭を稼ぐ事にはかわりがないのかと反省してしまいました。

投資方法が変わってきている

 株式投資の本を読むと、「株式は持続して持つものである」とか、「全体の流れを掴め」だとかもっともらしいことをたくさん書いています。確かに「安いときに買って、高いときに売れば儲かる」のでしょうが、これはなかなかできないと言うことがよく分かりました。人間心理として、チャートがどんどん右肩下がりになっている株を元気出して買おうなんてなかなかできることではないのです。ところが右肩上がりの株を購入してしまうと、自分が買ったとたんに下がり始めると言ったことはしばしば起こります。そこで、株式取引5年の私の利益確定法を伝授しましょう(笑)。

大儲け狙いは大損のもと

 私が株式投資を始めたのは、株式取引の法改正があったことと、先物取引で大損をしたという2点から始まったわけです。つまり、大損を取り返すには、大もうけを狙うしかないと言う浅ましい考えから始まったのですが、これがまたしてもドツボへの近道だったわけです。当時私宛に「株式投資の妙味」と言った内容の藁半紙に書きつづった手紙が毎月送られてきていたのです。こんな手紙はダイレクトメールの変形に過ぎなかったのでしょうが、株に興味があった私は、しかもちょっと「裏」の匂いがするものに弱い私はだんだんその手紙に引かれてしまったのです。その手紙に挙げていた銘柄は確かに毎月ぐんぐんと値を上げていました。四季報を調べることもなく、「確かに面白そうだ」とほくそ笑んだわけです。マネックス証券に口座を設け、その株に手を出したわけです。夜帰って株式チャートをみるのが楽しかったのは1週間くらいまででした。あっという間に1000円が500円に落ちてきました。その手紙は次の月にもやってきましたが、「ここは辛抱の時だ」なんて書いてありましたが、次の月からはやってこなくなりました。この株はとうとう4年ほど持ち続け、50円ほどで手放しましたが、えらい勉強をしてしまったものです。つまり、仕手株というものに知らない間に乗せられてしまっていたのです。1000円が1年以内に5000円以上にはなるとか、1ヶ月で倍にはなるなんて話は、大抵眉唾物の話なのです。仕手を仕掛けた人達は、いろんな話をまき散らし、うまい投資話で株価格をつり上げ、一般投資家達が食いついてきたらいいところで売り逃げをしてしまうわけです。後で少し勉強をしたところ、この「売り逃げ」もなかなか難しいのですね。つまり、「買い」が多くなれば株価格は高くなるのでしょうが、「売り」が多くなれば安くなるわけですから、自分が「売り」に出しても安くなるわけです。つまり、いかに煽って「買い」を増やして「売り逃げる」かが勝負となるわけです。これに躓いたいた人たちもかなりいるそうですから、「株ってコワイ」と言うことになるわけです。

堅い株投資は面白くない

 最初の勝負に負けてしまった私は、とうとう数年間沈没状態のままでした。軍資金が足らないのです。貯め込んでいたへそくりも底をつき、当分の間シュミレーションを続けることにしました。この時、「大きく儲けることを考えるのは止めよう」「堅い会社を狙おう」という「株の王道」を理解し始めました。女房やお袋を説き伏せ(騙して)軍資金を増やして再出発です。「株の王道」では「株はこそこそ売買を繰り返さない」と言ったものがあったものですから、じっくりとした銘柄を選んだわけです。多少の値上がりにはものともせず、10%の値上がりで始めて売ろうなんて考えていたのですが、こんな事をしていたら「ただ、株を持っている」というだけの世界です。当時は大損を抱えていたわけですから、心の奥底には「まだまだ化ける株が...」なんてスケベ心にとりつかれていたのかもしれません。たまには10%を確定できる株にぶち当たり、少しずつ利益を出し始めたのですが、株取引の回数は年に10回以下でした。堅い株を集めよう、配当金が大きい株を持っていようと思っていたのですが、昨年まで高配当を付けていた会社がその配当金に釣られて株を買ったとたん、配当は無配、株は暴落なんて事もありました。チャートと配当金だけをみて買ってもダメだ、やはり会社内容も調べておく必要があるなんて事をやっと憶えるわけです。

 やっと、昨年は今までの損を何とか取り返すだけの利益を上げることができましたが、投資方法は変わってしまいました。取引の数が10倍になっています。1回に確定した利益はほとんど数%です。10%の利益を確定したものは1割もありません。激しいのは、購入した3日後には売っています。「ああ、これがデートレーダーのやっている取引方法なんだ」と少しずつ理解し始めています。貧乏性の私は、購入した株がだんだん下がっていってもなかなか損切りができませんでしたが(もう暫くしたらまた上がり出す。その時まで塩漬けだ。なんて思っているうちに延々と低空飛行になると言うパターンはしばしばです)、やっと損切りができる境地に入ってきました。これは、ある程度利益が出てきてからなのです。つまり、負けが込んでいるときにはその負けに拘ってしまうわけですが、ある程度の利益を出していれば負けを早めに精算できる心の余裕も出てくるものだと理解したわけです。

小さな利益確定をこまかく

 最後に悩んでいることは、「売って利益を確定することか」「配当金を確定できる3月末まで持ち続けるべきか」という選択です。株式の配当金は、1年間持ち続ける必要が無く、確定日に名義があれば配当金は自分のものとなります。つまり、昨年の4月に購入して3月の始めに売れば、およそ1年間株を保有していたも配当金は手に入らなくなります。逆に言えば、その日に自分名義になってさえいればいいわけです。ちょっとした会社では、中間決算でも配当金を出します。昨年の9月、その配当金に釣られ、株価がかなり高騰したときにも売らず、名義が確定してから売ろうとしたところ、その株は下がってしまいました。この時、まず利益を確定し、下がったら再び買うという姿勢までは持てなかったという反省は今生きてきていると信じています。デイトレーダー達には「利益の確定」という命題しかないのかもしれません。

 今年は、先物取引の損も取り戻すぞ。


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