デュアルコアは新しい用途を見つけるのか
燃料電池が目の前にやってきた
お祭り小僧のランダム・アクセス
天災が続きますね。自分のところに来ない限り、他人事だと思ってしまう悲しい性ではありますが、これだけ毎日「台風」「地震」と続けば暗澹たる気持ちになってしまいます。やっと少しずつ景気も落ち着き始めたというのに、一体どうなるのでしょうね。先日台風23号に出会わし新幹線のなかで12時間を過ごしましたが、翌日新聞を読むと大変な被害が起こっていたのを知り、自分の災難のことなどはゴミ程度だと思い直しました。今年は大阪の出張中、3度も台風に遭い、やむ終えず大阪に泊まったことも何度かありましたが、こんな年もあるのでしょうね。阪神大震災のように都市インフラが完全にズタズタになってはいませんが、テレビで浸水した地域の姿を見る度に心が痛んでしまいます。心からお見舞い申し上げます。
「玄箱」のバージョンアップ
さて、今月は久しぶりに玄人志向の「玄箱」の話題です。玄人志向は、NAS(Network Attached Storage)組み立てキット「玄箱」のGigabit Ethernet対応版「KURO-BOX/HG」を11月下旬より発売すると発表しました。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は18,800円前後の見込みだそうです。3月に発売された3.5インチHDDを組み込んでNASを作る「KURO-BOX」の上位製品で、前モデルは15,500円前後でしたから少々値が張ります。前モデルからの変更点は、Gigabit Ethernet(JumboFlame対応)になり、CPUをPowerPC 266MHzに強化、メモリを128MBに倍増したほか、本体前面にUSB 2.0ポート×1を追加し合計2ポートになっています。前回のUSB 2.0ポートは正式にはサポートされていませんでしたが、利用方法はインターネットなどにチャレンジャーマニアが発表してくれています。もっとも、ハードディスクの転送速度が極端に落ちるという報告も聞いていますが、今回のUSB 2.0ポートもたぶん正式サポートはないでしょうね。そのほかの仕様は、Flash ROM 4MB、BigDrive対応ATA/100コントローラ「Sil680A」などを搭載。Linuxはkernel 2.4.17を使用し、sambaやnetatalk、telnetなどが組み込まれている。対応プロトコルはTCP/IP、AppleTalk。セットアップ対応OSはWindows 98 SE/Me/2000/XP、クライアント対応OSはWindows 95以降、Mac OS 8以降(AppleTalk接続)、Mac OS X 10.2以降(SMB接続)。付属CD-ROMに収録されるアプリケーションを追加することでUNIXのNFS接続にも対応可能。といったもので、バッファローのLANディスクNASの進化にあわせたものとなっています。
バッファローやアイオウから発売されているLANディスクを購入する金額と、「KURO-BOX」にハードディスクの金額を併せればあまり変わりませんが、「KURO-BOX」には遊び心をくすぐるものがあります。前回、HDD換装装置と「KURO-BOX」を組み合わせるシステムを作り、ドツボにはまってしまったのですが(単純な私の勘違いから起こったもの。もっともバージョンが古いものは多少問題があります。玄人志向のホームページからバージョンアップをする方が問題がないです)、量販店で「少量入荷しました」というポスターとともにに山盛りになっていたのを見て、またまた衝動買いをしてしまいました。当然私が購入したものは旧バージョンのものです。我が家ではまだGigabit Ethernetが布設されていないのです。換装装置を「KURO-BOX」と接続するためにはIDEの延長ケーブルが必要なのですが、幸いにしてその量販店で1本だけ見つけました。これで、HDDからHDDのコピーはとても簡単に出来るなと喜んでいます。2つの換装用HDDを組み合わせれば、貯め込んだファイルの整理がすっきりと出来るのではと思っています。技術的にはそんなに面白い趣向ではないのですが、ビデオキャプチャーなどと組み合わせると結構実用的だと思っています。
玄箱王コンテスト
http://www.kuroutoshikou.com/products/kuro-box/kuro-boxfset.html
玄人志向では「KURO-BOX」の面白い利用方法を募集していて、3回も開催しています。その中の一人が開発ツールとしてHDD換装装置と「KURO-BOX」を組み合せていることを本人のホームページに載せていました http://www.mmoto.mydns.jp/remove/index.html。BOXの外形を壊したくないと言う理由でむき出し基盤で換装装置と繋いだ装置が写真に載っていました。私が制作した方法は、「KURO-BOX」のU型カバーの一部を切り、そこから電源コードとIDE延長ケーブルを取り出し、HDD換装装置と繋いでいます。前回は試行錯誤であったため、この切り込みが少し大きすぎ、少々不格好になってしまいましたが、今度は最低限の切り込みがかっこうよく作り上げようと考えているところです。
デュアルコアはユーザーに何をもたらすのか
Intelは、Pemtium4のクロックアップをあきらめ、ひとつのCPUの中に複数のコアを埋め込むことによってCPUの高性能化を図るという路線に転換しました。クロックアップによる発熱が激しすぎて、クロックアップに変わる手法を選んだようです。もっともデュアルコア自体の方向性は少し前からアナウンスされていましたが、ここに来て大きくその方向に転換したようです。どんどんと投入されてくる新CPUは、数年サイクルでしかパソコンを購入しない普通のユーザーにとってはまさに浦島太郎状態です。同じ名前であるPemtium4においても、その内部は全く異なったものとなっていて、新CPUを自作パソコンに組み込もうとするとマザーボードからメモリまで新しく購入しなければならない事態となっていますし、中途半端な知識で部品をかき集めたりすると先般の私のようなトラブルに見舞われてしまうわけです。「昔はよかった」なんて愚痴を言うつもりはありませんが、CPUの高性能化は私たちに何を約束してくれるのでしょうか。IntelやAMDのCPUロードマップをみても大きな方向性は分かるものの、私の実感としてはだんだんピンとこないものになっています。286から386に性能が上がった時にも、当初は386の利用価値が分からず、少しの間386移行に躊躇してしまったことを思い出します。でも、当時のCPU能力はまだまだ非力だったので、新CPUの能力向上はソフトウェアの使い勝手に必ず役に立つという思いはありました。Windows3.0の登場によって386CPUはやっと陽の目を見、Windowsの改良とCPUの能力向上は蜜月時代を過ごしたわけです。私にとってもこの時期はとても楽しいものでした。今では当たり前になった映像がパソコン上でどんどんスムースに動き始めたからです。386時代には拡張ボードを入れることでしか映像が動かなかったのですが、Pemtium時代に入ってからはMPEG2の粗い映像からMPEG4の滑らかな映像までが、ソフトウェアとCPUのパワーで可能になったのですから、本当に驚いたものです。AMDの台頭によって、IntelはのPemtiumの下位バージョンであるCeleronを投入せざるを得なくなりましたが、動画映像はこのCeleronにおいてもそこそこの動きを見せました。現在のCeleronの最低クロックである2.0Ghzで有りさえすればDivxファイルであろうと全く問題ない再生を約束してくれます。今、コンシューマーユーザーにおいて3.0Ghz以上のクロックのPemtium4が必要な領域と言えば、ハイエンドなゲームだけとなっています。日常的にパソコンを使う要素であるMail、Web、ワープロ、表計算、映像再生等においては低価格なCeleronでも充分に機能してしまいます。
技術的に供給側は次々と新製品を打ち出していくことは必要でしょうし、私たちは彼らのそうした努力の上に今日のパソコン生活を楽しんでいるわけですが、デュアルコアCPUの新しい用途がまだ私には見えてこないのです。Intel社は、日本ほどの高級志向の高いパソコン市場においてPemtiumよりもCeleronの市場の方が大きいという自体に驚きを持っているそうです。日本のパソコン単価に含まれるCPUの要素は比較的少なく、DVDなどの周辺機器や液晶ディスプレイなどに使われていると言うことです。最近流行っている家電的要素のTVパソコンにおいても、ビデオキャプチャーボードなどが内蔵されているため、最高級のCPUは必要がないと言うことになるわけです。日本のパソコンユーザーは見栄張りばかりかと思っていたら、案外堅実な選択をしているようです。
コンシューマ世界において、何か新しいパソコンの使い方の提示が出来なければ、ムーアの法則に乗ったまま進化し続けるCPUの未来は現実との齟齬を味わうことになるかもしれません。
燃料電池がノートパソコンを...
一方ノートパソコンの進化には、「燃料電池」が未来を予感させてくれます。World PC Expo 2004において、NEC、東芝はきちんと一体化したシステムとして作り込んだノートPCと燃料電池ユニットを発表しました。燃料電池と言う新しい電力技術は、自動車、家庭用電源などで世界中で注目されている技術ですが、ノートパソコンと燃料電池の組合せは突き進んでいけばコードレスのデスクトップまで予想させてくれるものです。燃料電池はクリーンエネルギー時代の扉を開く鍵とまで言われている注目の技術で、水素と酸素により燃料電池で発電して、発電した後の水素は酸素と化合して水に戻します。極論を言えば酸素と水素でなる水を循環させてエネルギーを取り出す、まさにゼロ・エミッション(廃棄物ゼロ)の電力と言われているわけですが、実用化には今しばらくかかりそうです。NECはカーボンナノホーンを用いることで燃料電池の効率を上げることに成功し、この技術のパソコンへの応用に力を注いでいます。「燃料電池は触媒としてプラチナを用いますが、電極(カーボン)と触媒に燃料(メタノール)分子が触れる面積が大きいほど、(水素を取り出せる量が増え)発電量を大きくすることができます。カーボンナノホーンを用いると、白金をナノレベルで細かく分離して電極に付着されることが可能なため、燃料に触れる表面積を最大化できるのです(NEC基礎・環境研究所久保氏)」。通常の電極素材は平方cmあたり10mW程度の出力しか出ないそうですが、昨年展示したノートPC用燃料電池では50mWを達成。さらに今年は40%の出力アップを果たし、平方cmあたり70mWにまで出力が増加しているといいます。このため、比較的小型の触媒でもノートPCを駆動できるだけの電力を供給できるようになったと言うことです。
「今回、展示した試作機のメタノールカートリッジは250ccの容量がありますが、これで約10時間の駆動が可能です。バッテリ容量で言えば、およそ100Whぐらいでしょうか」
ちなみに現行のPC用リチウムイオンバッテリは、もっとも一般的な18,650セルの6本パックでおよそ50Wh。燃料電池と(充電が必須の)リチウムイオンバッテリは、その性質も使い勝手も異なるため直接の比較は無意味ですが、リチウムイオンバッテリや類似する充電型の電池も1.5倍から2倍の容量向上が見込まれています。ただ、燃料電池とバッテリの大きな違いは、充電時間が必要か必要でないかにあるといえます。電池が切れたらすぐに100cc程度のメタノールカートリッジを取り替えさえすれば、すぐにまた5時間近くの駆動可能と言うことであれば、バッテリの残量を気にして使うこともないわけです。燃料電池のモバイル用途として、ノートパソコンよりは携帯ビデオやデジカメの方が有効でないかという話もありますが、「無線」と「燃料電池」があれば天災などの災害時においてもパソコンは大きな力になることでしょう。コンパクトでパワーのある燃料電池の実用化は楽しみです。