OMATSURIKOZO's talk salon


ランダムアクセス 2006年8月号
連載232回

「Shade」に挑戦
3Dソフトはなかなか敷居が高い

世論の動向に流されてしまう世界があり
私はこれに抵抗できるのだろうか


本文

お祭り小僧のランダム・アクセス

 今年の梅雨もなかなか激しいものがあり、至るところで集中豪雨の被害が出ています。雨が少なければ水不足、多すぎれば水被害と、自然は人間に期待通りにはそってくれません。そういえば、北朝鮮のミサイル発射事件は国連決議を巡って二転三転したわけですが、日本を取り巻く国々の思惑が滲み出てきて、国際関係の難しさを見せてくれました。靖国問題を巡って中国・韓国と近隣アジア問題が小泉内閣の弱点と言われていたわけですが、北朝鮮の暴挙は小泉内閣を助けたようですね。韓国の大統領は「日本は騒ぎすぎだ」と嘯くし、北朝鮮の崩壊は自国の不利益になると考える中国は強硬な制裁決議案には拒否権で応ずるという。日本では、とうとう防衛庁長官は「敵ミサイル基地を攻撃できるミサイル構想は自衛の範囲である」と言いだし、これはちょっと勇み足だったようですが、北朝鮮のミサイルが間違って日本の国土に届いたとしたら、これは日本の国論にとっても大変なことになってきます。人的被害が多少でも出たとすれば、「国際平和が大切」とか「戦争は二度としてはならない」といった綺麗事は一気に霧散し、「北朝鮮に二度とミサイルなんか打たせないため、経済封鎖などは生ぬるい、ミサイル基地を攻撃しろ」といった風潮が一気に生まれるのではないかと不安になってきます。こんな時、「いやいや、あれは単に誤射だったのだ。ここはひとつ冷静に」なんて主張をしたところで、「そんなことを言うのは非国民だ」と批判されるか、そんなことを言わせない雰囲気になってしまう危険性を拭えません。先般のワールドカップにおいても、日本チームの実力を過大に評価し、「今の日本チームが1次リーグを突破することは奇跡的なことだ」と冷静な判断を下すことより、いけいけどんどんの主張が多勢を占めて、虚しい空元気だけが世論となっていたことを忘れてはならないでしょう。自己評価と他者評価がずれ始めだした時、浮いてしまうことを心にとめておきたいと思うこの頃です。

プレゼンテーションソフトに填り

今度は動画を

 さて、昨年末からプレゼンテーションツールである「PowerPoint」に填っていると言った話を書きましたが、これがなかなか好評なのです。もっとも他者評価と自己評価が違っていたら笑い話なんですが。あのプレゼンを見た人が、「画面にたくさんの絵が出ているのは良いのだけれど、やはりここは動画だね」と言ってくれます。私としても動画が欲しいものの、そんな才能はありません。そう言えば20年ほど前、「カリグラフ」という線画動画に挑戦した記憶がありますが、あれはある種の「ヘタウマ」世界が成立したものですが、本格的な動画というヤツはなかなか手が出しにくい世界です。最近流行りのFlashには手を掛けてみましたが、なかなかうまく動かないため、結局諦めてしまいました。サンプルに山の上をカラスが飛ぶというものでしたが、これさえなかなかうまく動かなかったのです。動画の原理は分かっています。パラパラマンガを次々と作ればいいわけですし、パソコンが中間の動画を自動作成してくれるという時代ですから、そんなに深く考える必要はないのかもしれませんが、自分の思い通りの動き方をしないことに腹を立て、途中挫折してしまうのです。この間の反省点として思いついたのは、フリーソフトでやるから真剣さが足りないのだと言うことです。かといって、そんなに高いソフトを買って挫折してしまっても...と思う気持ちも同居しています。というのは、やはり20年ほど昔、友人達と金を出し合って購入したアニメーションソフトですが、誰1人満足な作品を作った記憶がないのです。そんな時期、「カリグラフ」はとても安いソフトでしたが、私の創作意欲をかき立ててくれ、何作かばかばかしい作品を作ったものでした。つまり、私が望んでいるものを作れるソフトであるかどうかが問題だと思い至ったわけです。

「Shade8.5」との出会い

 そんな時、パソコンショップで積み上げられていたのが「Shade8.5」でした。このソフトの名前は前々から知っていたのですが、かなり高価なので敬遠していたのです。ところが「Basic」と名付けられたソフトの定価は1万円程度。その店では参考書付きで8千円程度で山積みに積まれていました。少し興味があったので、本をぺらぺらとめくってみると私が作りたい動画が何とか出来そうではないですか。「よし、こんな金額なら途中で放り投げても良いじゃないか」と購入してみました。「Shade」は基本的には3D作成ソフトなのですが、これを利用してそのソフトでaviまで作れてしまうと言う優れものと思ったわけです。元来マニュアル通りに勉強を進めるほどの気力はなく、自分が欲しいと思うことにすぐ作業を進めようとする性格の私にとって、なかなか概念の把握が難しい。思い出したのは、CADソフトに挑戦した時でした。説明書の通りに書き始めたのは最初の5ページほどで、それから後は自分が作りたいプラントの概略図に移行してしまったのですが、これが幸いしたのか1日でそこそこに使えるようになってしまったことです。「頭脳WinCAD」というソフトを購入する前には「AutoCAD」などをコピーして貰い、何度か書き始めたものの、結局中途半端なまま投げ出したものでしたが、いろいろソフトの内容を調べたあげく、自分に合っているなと思うソフトと出会った途端、なんとか1日ほどでプラント図を書き上げてしまったことを思い出しました。会社の若い連中に、「これからはCADの時代だ。お前達も勉強しろ」と叱咤激励をしたものでしたが、最近は彼らの方がずっと機能を使いこなし、自分で書き上げるよりももっと精細なものを短時間のうちに作り上げるのを指をくわえてみているだけです。彼らにしてみれば、上司がそこそこに使い始めたものを知らん顔を決め込むか、それ以上になるのかは生活が掛かった死活問題だったのかもしれませんが、そこそこ使えるようになった部下のその下はもう始めからそんなものは常識だと言った雰囲気で仕事をしています。もっとも、当時一生懸命私に付いてこようとした部下の半数は私より下手なままで現在に至っているわけですが、こうしたヤツラが「中年のパソコンはイカンしがたい」と若い連中に笑われているメンバーかもしれません。まあ、どこの職場にもいると思うわけですが、何年経ってもキーボードの打ち込み速度も上がらず、タブ機能さえ使えずスペースで行頭を揃えるヤツがいるのです。彼らにとっては、ワープロを使って書くのは「印刷」だけを考えていて、そのデータを拡大再生産に用いようなんて気持ちはさらさら無いのです。スペースで揃えられた文章は行の文字数を変えた途端見るも無惨なんてものを味わったことがないのか、無知なのかは分かりませんが、私にとっては「こんなヤツラまでパソコンを使えますなんて言っているのだから、凄い時代になったものだ」と妙に感心してしまうわけです。

私の「Shade」体験記

 さて、話は元に戻しましょう。今月は私の「Shade」体験記です。そんなこんなで私は私の仕事であるシールド工事のシールドマシンの曲線部の動き方を動画で見せたくて、このソフトに挑戦したわけです。機械類の表現はパソコンには適しています。そのことはCADソフトで十分に承知しています。まず最初にしなくてはならないのが、シールド機の3D画像製作です。あまり深く考えなければ、シールド機というのは、茶筒を横にすれば良いだけです。マニュアル本を読みながら、まず正面図に円を書きます。この時、上面と側面をきちんと揃えて無くては、正面に円を書いた途端に立体的には斜め円になってしまうことに気付きました。3Dで図面を書くと言うことは、空中のなかにおいてきちんと姿勢を正して立体図を意識しながら図を書き込まなくてはならないのだと思い知らされたわけです。CADで図面を書くのは2Dなので、その場その場で自分が位置を変えればいいのでしょうが、3Dではどの位置で書くのかをしっかり確認しなければならないことに気が付きました。しかし、これが難しい。正面図に書き込む時でも、上面と側面を意識したないととんでもない形になってしまうわけですから、ここの概念の把握が最初に必要になります。これが分かれば、茶筒は簡単に書けます。正面で単純円を書いた後、側面でこれを引き延ばすだけで、立体図は茶筒となっています。わっ、これは簡単だ。難しいことは考えず、四角をつくり、これを引き延ばせば段ボールが出来るわけです。私が書きたいシールド機は、ふたつの短い茶筒が折れ曲がる構造のものです。そこで、この茶筒を半分ほどの短さに縮め、少し離してコピーしてみました。ふたつの茶筒を連結する部分の円は少し小さいものにして、3つの茶筒を重ねて並べてみたところ、立体図ではワイヤーフレームでそれらしくなっています。そこで、これをシェーディングで色づけすると、立体図では中折れ式シールド機にニュアンスが出来ているではありませんか。気をよくした私は、この中折れ式シールド機を曲げてみることにしたのです。moveというコマンドで支点を決め後胴となる部分を少し曲げてみたところ、立体図では関節が曲がった茶筒が適当に光を受けた色合いで表現されているではないですか。立体図のところにマウスを動かし、スペースキー押しながらマウスを動かすとこの立体の全体がくるくると回りだし、上下左右の視点から見える形に変わってきます。だんだん嬉しくなってきた私は、茶筒の前に土を切り出すカッター部が欲しくなってきます。

マニュアル本の切り口が違う

ところがこれをやろうとするとなかなかうまく行きません。元来飽きっぽい私はその時点で投げ出してしまいました。数日後、パソコンショップに寄った時、「Shade」のマニュアル本を探してみると、結構あるものです。建築関係用とか、アニメ用とかがあるわけですが、私の用途などにダイレクトに関係するものはありません。しかし、何冊も探しているうちに「面白そう」と思える本に出会えました。このほんの切り口は、ソフトに付いていたものとはかなり違っていました。ワープロソフトとかカルクソフトのマニュアルは似たり寄ったりの書き方なのですが、このような多機能なソフトのマニュアル本というのは切り口によってかなり異なっていることが分かりました。友人に話をすると、アドビのソフトなどもそうだと言っていました。画像系というのは用途も多岐に渡るため、その仕様用途によって取り組みの切り口が異なっているのでしょうね。

新しい体験をさせて貰った

 新しいマニュアルと首っききでカッター部の作成のヒントがありました。これを試行錯誤するうちにますますシールド機のようになってくるではありませんか。こうなったら、だんだん面白くなり始め、このカッター部に土を切削するカッタービットを付けたくなり始めました。試行錯誤の上、やっとのことひとつのカッタービットを作り上げると、これをコピーしてカッター部の前面にそれらしく適当に配置することが出来ました。このようにして出来上がったシールド機を今度は動画にしてみようと挑戦です。折れ曲がったシールド機全体が少しずつ曲線移動するという動きをシュミレートした後、これを動画にしてみました。部下に見せると、最初の一瞬「これは凄い」の声が聞こえたものの、「カッターが廻っていない」とか「シールド機の後ろにはセグメントがあるはずだ」とかどんどん注文を出してきます。「そんなに簡単に出来るもんか」と笑いながらも、少しずつ改良を加えること1週間、私の会社が提唱している新工法の動画シュミレーションが完成しました。部下達は今もって「まだこんな事が出来てない」とか「もっとリアルに」とか言いますが、通常に仕事の合間を縫いながら、よくここまでのものが出来たなと自画自賛をしているところです。作成した3Dのデータを少し大きめの画面でaviに変換しようとすると、たった20秒ほどの動きの製作に4時間くらい掛かり、「ああ、これが動画世界のデコードなのか」と痛感してしまったわけです。「Shade」の機能がまだまだ理解できたとは言えませんが、こんな凄いソフトが1万円以下で発売されているという事実にも驚いている今日この頃です。


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