OMATSURIKOZO's talk salon


ランダムアクセス 2007年10月号
連載238回

インターネットは
その光と闇の中,どこに行く

USB3.0の仕様策定が決まる
フリーのウィルス対策ソフトのお薦め


お祭り小僧のランダム・アクセス

 今年の夏は本当に暑かったですね。皆さん、お変わりありませんか。いつも元気を取り柄として生きてきたお祭り小僧も、寄る年波には勝てず、最近は全くの出不精になり、覇気の上がらない生活を送っています。

「ランダム・アクセス」の連載を止めたら、パソコン雑誌に目を通す習慣もだんだん薄れ、トレンドに疎くなってきています。下の息子がとうとう就職してくれたのですが、毎日夜遅くまで働き、休日は休日で出かけているため、購入したパソコンのセットもままならないようです。「親父が組立なんかもうやらないぞと言っていた意味が分かった」とぼやいていましたが、学生さんと勤め人の違いを実感しているようです。好奇心に駆られ、時間を何とか捻出してパソコン遊びに夢中になっていた頃と比べ、今はある程度の自由時間が持てるのに拘わらず、今ひとつ自分の中に盛り上がりがないのはどうしてなのでしょうか。「仕事を頼むなら忙しい人に頼め」と言った格言がありますが、暇になるといつでも出来ると先送りして、結局ままならないままに時が過ぎていくようです。

 とはいえ、局長より原稿の催促がやってきました。ネタがないわけではないのですが、タイミングがずれ込むと話に興が湧かなくなるし、さてさて..。

USB3.0仕様策定始まる

 最初の話題はUSB3.0です。IntelがIntel Developper Forum 2007 秋期において、とうとう公式発表しました。WIN98でUSB1.1を使っていたときに比べ、2.0規格はUSBスティックメモリの転送速度が「ずいぶん早くて便利だな。」という実感を持ったのを記憶していますが、とうとうUSB3.0時代の幕開きです。あらゆるデバイスがひとつのケーブルというか、コネクタを通じてパソコンとリンクするという概念は本当に素晴らしいもので、USB1.1の当時はその先進性に感動したものでした。ただそのスピードの遅さに多少がっかりしたものでしたが、当時のデバイスそのものはそんなに高速でなかったので「そんなものだろう」とそれなりに利用したものでしたが、2.0時代になるとCD-ROMやDVD-ROMまでが実用範囲になったばかりでなく、USBメモリが完全にFDDに取り変わる時代となってしまいました。当初のメモリ容量はそんなに大きなものでなかったため、2.0規格の転送速度で充分満足していたわけですが、USBメモリばかりでなくHDDの容量もますます肥大化してきたため、最近はもっと早くならないものかと少し苛立ち始めていたものでした。少し、時代とUSBメモリ容量のおおまかな目安を書いておきましょう。2000年=64MB  2001年=128MB  2002年=256MB  2003年=512MB  2004年=1GB  2005年=2GB  2006年=4GB  2007年=8GB。まさに倍々ゲームですね。USB3.0が製品化される頃には32GB時代になっている事なのでしょうね。

 インターネット情報によると、USB3.0の概要は下記のようです。

 米インテルは主催する開発者向け会議「Intel Developer Forum(IDF)」において、USB3.0の概要を明らかにした。現行のUSB2.0と比べて、通信速度を大幅に引き上げ、パソコンと携帯機器および家電製品をつなぐ役目を担う。通信速度については「現在の通信速度の10倍以上が目標」(説明を担当した米インテルのジェフ・ラベンクラフト氏)と言う。USB2.0の通信速度は最高480Mbps。USB3.0は4.8Gbps以上になる見込みである。高速化しつつも、コネクターの形状は現行の2.0との互換性を保つ。ただ、USB3.0ではコネクターの中に光端子を入れられるようにし、光での通信も可能とする。携帯機器との接続を考慮し、低消費電力での動作モードの追加や、通信プロトコルの改良も施すという。  現在は、草案の段階。2007年11月に開かれる開発者向け会議で、バージョン0.75となる仕様を明らかにする予定である。米インテルは2008年上半期に仕様をフィックスしたいとしている。

パソコンの速度はますます加速するね

 期待できる仕様のようですが、さて既存のパソコンにこの仕様は接続できるのでしょうか。話によると、PCIslot(1Gbps)の転送速度のボトムネックがPCI-EXPRESS(5Gbps)によって解消されるように、パソコンの基本性能がこの時点でひとつ大幅に変更されるのではと考えられます。多分、既存のパソコンのPCIスロットにはこのUSB3.0(4.8Gbps)は付かないでしょうね。うーん、速くなる事は嬉しいけれど、私の今のパソコンには関係ないかも。

ウィルス対策ソフトは入っていますか

 相変わらずパソコンウィルスは猛威をふるっています。新しいウィルスはどんどんばらまかれ、キンタマウィルスではないですが、相変わらず社会問題になっています。こうしたウィルスに対抗する既存のウィルス対策ソフトは、まだまだ金額が高く、毎年の更新に3000円から5000円が求められています。私のようにパソコンを何台も所有しているものにとってはたまらない出費です。ソースネクストは継続料が無料、複数台は減額などのサービスを行っていますが、それでも5台以上のパソコンにウィルス対策ソフトを入れるとなるとちょっとした出費です。

 そもそも最新のウィルスにウィルス対策ソフトが有効かというと「疑問である」と言った統計も出ているそうです。もっともそれだからと言って無防備のままインターネット社会に乗り出してくる連中も問題があります。常識的な範囲においてウィルス対策ソフトは有効である事は間違いないわけですから、最低限の対策だけは行う必要があります。そこで、最近は私的利用の範囲という制限があるものの、フリーのウィルス対策ソフトがたくさん発表されてきています。当初は日本語に対応していないとか、素人には扱いにくいイメージがあったのですが、今では日本語に対応しているソフトも多くなっています。私はavastというウィルス対策ソフトをメインのパソコンに入れていますが、毎日のように更新をしてくれますし、ちょくちょく迷惑メールの中に「ウィルスが検知されました」というコメントも出てきます。高価なウィルス対策ソフトにはセキュリティが強すぎて、時としてソフトのインストールが出来なかったり、デバイスを接続できなかったり、頭を悩ます事がありますが、このソフトではそんな事がありません。最近では、このソフトの他にもなかなか評判のよいウィルス対策ソフトが出ています。一度参考にしてみたらどうでしょう。

http://softya.fc2web.com/index.htm

ウェブアプリって使ってます?

 無料ソフトと言えば、ウェブアプリ(インターネット上にあるアプリケーション)が次々と公開されています。少し前、私が話題にした100ドルPCのアプリケーションもウェブアプリです。また、そこそこのデータならウェブ上の記憶領域に仕舞っておく事も出来るという時代になってきました。インターネットに接続できる環境(OSを持った端末)を持っていて、インターネットに接続してウェブアプリを呼び出して仕事をした後、作成したデータをインターネット上にセーブしておくことができる環境は、もはや新しい世界ではなく、どうやらオンラインとオフラインをシームレスに繋ぐ技術こそが今日のウェブアプリという時代だそうです。こうしたインターネットの普及は、従来のオフラインアプリケーションメーカーにとっては死活問題でしょうね。従来の通信業者がインターネットの普及によってその事業形態を少しずつ移行させているのと同じように、オフラインアプリケーションメーカーもその収益モデルの変更を余儀なくされていく事でしょう。20年前、10円から100円硬貨で電話が出来る公衆電話が生まれ、プリペードカード時代に移行し、ICカードに移行するかと思えた公衆電話は、携帯電話の普及であっという間に町中から姿を消してきました。長距離電話料金はIT電話の普及で圧倒的に安くなり、NTTはこれからどうなるのだろうと心配したものですが(私がどう心配しようと天下のNTTには関係ないか)、それなりの転換を押し進めています。ただ、ユーザーである私達は、より利便性に富んだサービスをいかに利用するかと言う事を考えればいいわけですから、このようなサービスに敏感であるべきだろうと思っています。 インターネットで台頭してきたGoogleがウェブアプリの仕掛けを打ち出す事は当たり前と言えば当たり前ですが、Adobe Systems社は著名なアプリケーションメーカーでありながら、最先端のウェブアプリ仕様(AIR)を打ち出してきた事は驚きです。こうした一連の動きには、驚きと共にその進化の早さに「付いて行けねぇや」と呟くほかありません。人より先に試してみたがった私も、最近はみんなで渡れば恐くないと言う世界に埋没してしまったようです。

セカンドライフって知ってます?

 そう言えば、Web2.0ともてはやされたSNSの上を行くと言われる「Second Lifeセカンドライフ」が一部で盛り上がっていると聞きます。リンデンラボ社が主催する「セカンドライフ」というインターネット上の仮想空間では、参加したユーザーがアバターという仮想人格で自由な仮想生活を送る事が出来るというインターネットサービスです。この世界では、遊び方はユーザーの自由ですが、制作物の著作権及び所有権が認められていることと、セカンドライフ内の仮想通貨を現実通貨に換金できること、があります。日本語版が登場した後、有名メーカーや百貨店がこの中に店を出したと話題にもなっています。仮想空間で別人性を送る面白さと仮想通貨を現実通貨に換金できるという現実世界と仮想世界のパイプを作っている面白さが、新しいバーチャルビジネスといえるのでしょう。世界中に数100万人のユーザーがいるとか、セカンドライフの中で1億円の長者になったものがいるとか話題には事欠かないようですが、コアなユーザー集団からポピュラーな世界になれるかどうかはまだまだ見物です。

インターネットの光と闇

 しかし、こんな世界に填ってしまうとなかなか現実世界には戻れなくなってしまうような気もします。日本だけでなく、韓国や中国でもインターネットゲームにはまり込んでインターネットカフエに何日も居続ける若者がたくさんいると聞きます。はまり込んだ先にはどんな闇が待ち受けているのか、まだ何も分かってはいません。しかし、「闇サイト」では危ない商談が暗躍していて、先般もネットで知り合った数人の男達が通りかかった女性を襲い殺してしまう凶行がありました。彼らは互いの本名も生活も知らず、凶行を共謀するためだけにその時集まったと聞きました。自殺サイトに集まって集団自殺をしたというニュースを聞いた時には、「まあ、そう言う事もあるだろうな」と思ったものでした。こんなことは、雑誌などを利用したとしてもある事だろうとタカを食っていたのですが、「完全な匿名性で互いの通信が出来る」インターネット世界では、自殺だけでなく、凶悪犯罪まで匿名性の中に発生するという危険性に私はその時には気が付いていませんでした。

 もはや後戻りが出来ないほど普及してしまったインターネット世界は、その中に当然「光と闇」が生じる事は分かっていましたが、「闇」の部分がこれほどまで深くおどろおどろしいものにまで向かっていくとは私は思っていなかったのです。人をシニカルに、あるいは世界をシニカルに見る傾向があった私も、基本的には性善説に基づいた人生観を持っていたのだなと改めて思い至らされました。「子供達に有害サイトを見せない運動」などというものをちょっと鼻白いもので見ていた私でしたが、現実の世界がここまで悪意に満ちているのなら、このまま有害サイトを放置し続ける事は問題ではないかとも思うようになったわけです。もっとも、子供達を全くの無菌状態に置く事の怖さも十分に承知した上で、インターネットを子供達にどう指導したらいいのかが問われる社会になっています。

 うーん、本当に難しい。戦争が新文明や新文化を創ってきたというシニカルな歴史と同じように、インターネットは今日の「戦争」なのでしょう。直接それに拘わっていようと拘わっていまいと、もはやインターネットは文明社会に生活する世界中の人に影響を及ぼしている事を自覚しなくてはいけないでしょう。


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